光の風-2
「胡散臭いとは思うが、どうする?」
「どうもこうも、今日がその日なんだから仕方ないだろう。」
肘置きに片肘ついて、やる気がなさそうにカルサは足をくんだ。玉座の間はいつにまして兵士の数が多い。
「もっと緊張感をもてよ、一応警備態勢を強化しておくが…。」
周りを見ろと言わんばかりに両手を広げ熱弁をはかろうとする秘書官の言葉を、余裕のある笑みでカルサはさえぎった。
「オレを信用しろよ。もし偽物なら跡形残らず砕いてやる。それに、風神かどうか一目で分かるさ、騙せはしない。」
目付きが鋭くなる。王としての威圧か、雷神としての威圧か、玉座の間には緊張感が漂った。従者の一声でそれは頂点に達する。
「風神リュナ様がお見えになられました。」
入り口に誰もが注目した。国王の一言で彼女は姿を現す。
「通せ。」
「失礼いたします。」
細く長い髪が風にゆれる。風神は従者を従えながら玉座の間に入った。頭を伏せたまま入り口先で一礼をする。
「風神の力をもつ、リュナ・ウィルサと申します。カルサ・トルナス陛下。」
透明感のある高い声が響いた。まさに風をイメージするかのように鮮やかな色の衣服をまとい、すべての人の視線を集める。
「…顔を上げよ。」
声に緊張が走る。風神はゆっくりと顔を上げ、二人は見つめ合った。しばらく誰も動かない静かな時間がつづく。時計の針を動かしたのはカルサだった。
「…よく来てくれた。リュナ、会えて嬉しいよ。」
その声はとても優しい音だった。カルサの言葉を聞き、リュナは安心したようにほほ笑み答えた。
「私もです…お会いできて光栄でございますわ、カルサ・トルナス陛下。」
リュナを見てうなづき、その場にいる皆に伝えるように言葉を放つ。
「その力、確かに風神の力を感じる。サルス、風神リュナ・ウィルサに部屋をひとつ用意しろ。リュナ、ここで話すのもなんだからな、オレの部屋へ行こう。」
顔をあわせたと同時にカルサはてきぱきと話を進めリュナを連れて出ていった。秘書官サルスを含め、その場にいたものは茫然と立ち尽くし二人を見送る中、一人の兵士がつぶやく声でサルスは我に返る。
「あのお方が風神様なんだ…。」
「全員持ち場についてくれ。城外の警備を強化する。この城に御剣が二人もいるんだ…これは大変なことだぞ。」