第2話-8
肩にポシェットをぶら下げて、頭に麦わら帽子。長い黒髪をツインのお下げ髪にしたファッションだった。さらにピンク色の縁の伊達眼鏡まで掛けている。
(ほぼ完全に変装に近いな...)
シンはジュリの姿を見てそう思った。
「ねえ...どう?可愛いかしら?」
ジュリはシンの目の前でクルリと回転しながら言う。
「別に良いんじゃない?」
素っ気ない返事に、ジュリは頬を膨らまして
「何よその言い方!」
フンッと怒って、靴を取り出して玄関を出て行く。
「お...おい!」
シンは慌ててジュリを追いかけて行く。ジュリはエレベーター前で立ち止まっていた。
エレベーターが来て、2人は下へと降りて行く。
下まで降りて行き、マンションの玄関前でシンは車のカードキーを取り出す。半透明の電子カードで出来たカードキーは、ホログラムのマークを動かすだけで、ロボカーのセンサーが反応して、オートで所有者の場所まで移動出来るシステムが内蔵されていた。
車を呼び出そうとしたシンを見てジュリが「待って」と呼び止める。
「ねえ...今日は、歩いて行きましょう」
「え...そうすると、バスで行かなきゃ行けないよ?」
「それで行きましょう」
ジュリはシンの腕を掴んで、2人で歩き始める。
(近くにタナカコーポレーションの人が来ているわね...)
ジュリは鋭い観察力で、相手が近くにいる事を見抜いていた。
マンションから少し離れた路地に白のクーペ式のロボカーが停車していた。そのロボカーには黒のWBディスプレイを掛けているミヤギが、2人を観察していた。
「こちらミヤギ。現在対象となる人物は、少女と思われる人物を連れて外出を始めました」
「了解。そのまま追跡を行って下さい」
「了解...行動を開始する」
ミヤギは通信を切り、車をオートで移動させる。