第2話-5
「分かりました。しかし...集団での行動は目立ちますので、小規模でもかまいませんか?」
「そうですね。現状逃亡している様には思えないので、目立たない程度に行動して戴ければ幸いです」
「分かりました...では、署に伝えておきます。クロダ君、良いかな?」
「はい。報告をしておきます」
クロダは、そう言って部屋を出て行く。
「ところで、話は変わりますが...お宅の製品は、どの程度まで使えますかな?」
ヨシナガがニヤ付いた感じの眼差しで、タナカを見る。
「ほぼ...生身の女性と区別されない程に仕上げています」
「あちらも...ですか?」
「ええ...もちろん、女性の物と...さほど変わりはありません」
「私は、長い事今の妻と一途にして行きましたが、最近妻も年を取って、うまく夜の相手がして頂けなくてね。腰の辺りが少し寂しくてね、そちらの若いラブドールを少し貸して頂けると嬉しいですがね」
「それならば、どうぞこちらへ」
タナカは、席を立ちヨシナガを連れて、部屋を出て行く。
2人は、製造工場へと向かう。そこには数十体のアンドロイドがガラス製の培養液の中に入って眠っている状態で置かれている。
「我が社のアンドロイドは、全てオーダーメイドであり受注生産で製造されてます。その為、同じ顔、同じ体は、一体もありません。ただし...ラブドールに関しては別課題です。年齢は若く10代後半〜20代前半である事が必須条件であります。顔立ちは整っていて、美しいスタイルである事が、多く求められます。その為、似たルックスが多いです」
タナカは、工場の奥の扉を開けさせてヨシナガを奥へと連れて行く。奥の室内は、ピンク色のライトに照らされた室内だった。薄気味悪い感じがした。何処からか「ウフフ...」と、女性の笑い声が聞こえた。
「我が社の全てのラブドールは、こちらで製造しております。非公式である為、あまり公にはされていませんが。これらも全てオーダーメイドで製造されている物ばかりであります。我々の間では、彼女達をルナシリーズと呼びます。その中でも特に最高に良い物をルナ・リスファーシリーズと呼んでいます」
タナカが進む先には、女性用アンドロイドが、ガラス製のパネルの中に、閉じ込められていて、白い衣服に身を纏い、眠っている状態で保管されていた。
見方を1つ間違えれば、全てが仏さんにも見えかねない感じがした。
「当初の目的は、こちらがメインで販売されていたのですよね?」
ヨシナガが眠っているアンドロイドを見ながら言う。
「よくご存知で...そうです。本来は、こちらを主点に製造販売していました。しかし...あまりにも人間に似すぎると、口うるさい御婆さんや、政治家達による批判を受ける的になり、公式での販売を避ける事態へと発展して行ったのです。ラブドールを購入した人達からは、生身の人間を相手にするよりもずっと、感度が良くて気持ち良いとの言葉が後を絶ちません。それが反って彼等アンドロイドの居場所を狭める行為となって行くのです。販売を開始してわずか10年程の間に、ラブドールの販売は毎年の様に様々な制限が課せられています。今では...この子達による人権法さえ出ている程です。完全な人間でないのに...購入者にはアンドロイド条件として、1人の者が購入出来るアンドロイドは1体のみ...と言う決まりが既に発生しています。以前は裕福な方が軽く10体程購入して行ったのに...現在では制限が課せられて困っています」
「大半の流れは知っていましたが、国内の政治団体が、そこまでややこしくしていたのは、始めて聞きました。ある家庭では遺産相続をアンドロイドにしてしまったとの噂話を聞いた事がありましたが...国内の法が既に人権レベルとして取り扱っているとなると、下手に利用するのさえ難しくなりますね」
「最近では、男性購入者達が、あらかじめ年齢の低いアンドロイドを選び数年かけて、発育させてラブドールにする方法を選ぶ方が多いのです」
「成長するのですか?アンドロイドが?」
「子供型アンドロイドには、あらかじめ発育システムが搭載されているのです。月単位〜年に1回、培養液に入れて自分好みの成長を楽しませるサービスを行っています」
ヨシナガは唖然とした。人間に近い機能を持ち合わせていると言っても、発育機能があると言う事は、それはもう...人間とほぼ同じ事であると確信した。
「良ければ、どれか一体を、お相手に使わせますが?」
「基本システムやスタイル等は、同じ何ですよね?」
「ええ...先程のメイド用から、こちらに眠っている物まで、ほぼ全て同じであります。膣の機能は、平均女性に基づき、濡れ具合も全て女性の感度を参考によって作られていますので、男性器が入って摩擦する感度は、かなりの物だとの評価を得ています。ちなみにアリサにも、ラブドールとしての機能が添え付けられています。彼女には我々としては、初の子宮としての機能を搭載させてあります」
「ここにいるアンドロイド達とは違う...と言う事ですか?」
「ええ...、つまり彼女には月経があるのです。血液を持たないアンドロイドですから、胎盤が出るのは粘膜の様な物ですが...やり方によっては、子を宿す事が可能だと思われます」
「アンドロイドが、人間の子を生むって言う事ですか?」
「多分...そうなると思います。実際まだ分かりませんが、可能性としては十分考えられます」
ヨシナガは、眠っているアンドロイド達をみて、限り無い可能性を秘めた少女姿の人形に、わずかながら興奮を抱いていた。
「こんなに沢山いては、どれが良いか迷いますね」
「お好みでどうぞ」