十一-3
父と娘は裸の下半身を向かい合わせて、今にもつながろうとしていた。
いや、父が娘を犯そうと全身をきばらせているのだ。
春子の姿に紫乃の幻を見ている和彦は、その割れた粘膜を指でなぞっていく。
下から上、上から下へ、たっぷりと時間をかける。
声の出せない春子は呻くだけである。
「もう一度、ここから春子を産んでくれ、紫乃」
和彦の指が膣に入り、春子が逃れると、またすぐに指が追ってくる。
そうして膣内を巡っていく。
「これが君の応えなんだね」
白濁した自分の指を見て和彦は言った。
やがて春子の股間に迫っていく。
二人の局部がつながり、一つになった。
「見てごらん。尊い命が、君の中に宿るんだ」
和彦の目は、らんらんと輝いている。
春子はそんな父を見たくなかった。
いたずらをしたときの罰でもなければ、優秀な成績をおさめたときのご褒美でもなく、ただ性欲を処理するための行為がそこにあった。
こんな愛され方なんてあるのかしら。
お父さんはお父さんじゃなくて、私も私じゃなくなってきている。
どうして親子がこんなことに──。
春子が滅入っているあいだにも、和彦は腰をしゃかしゃかと振っている。
合わせて春子の頭も上下に揺れる。
気持ちの方向が違っていても、体はおなじ方向へ向かっていた。
「すまない。これを解くのを忘れていたよ」
和彦は春子に挿入したまま、春子の口と手を拘束から解いてあげた。
春子の第一声は、いじらしい喘ぎ声だった。
「はっ、あっ、うん……」
それはすぐに和彦の腰つきに火をつけた。
燃え盛る情熱が、春子を打ちのめしていく。
手足が自由になったからといって、たった十六歳の少女の力ではどうしようもない。
「お父さん、やめて……」
春子が足を投げ出したとき、何かを蹴飛ばしてしまった。
見ると茶色い紙袋が足元にあった。
「紫乃のために買っておいたんだ」
和彦は中身を取り出して、春子に見えるように並べた。
婦人用の化粧道具だった。
春子には和彦の気持ちが痛いほどわかった。
妻を失った現実から逃れるために、娘に執着しているだけなのだ。
禁じられた親子の営みにも、そういう理由があるのだと思った。
和彦は化粧道具の一つを手に取り、春子の顔に近づけた。
目を閉じた春子の眉に眉墨が塗られた。
筆先が春子のおでこをくすぐっている。
さらに頬紅を施し、終わりに口紅を書き足せば、その美しい仕上がりに和彦は吐息をついた。
「紫乃、きれいだよ」
春子は複雑だった。父がどれだけ母のことを愛していたのかがわかったとしても、自分は今、その父によって犯されている。
膣内をずるずると引きずられるほどに、紳一への思いが胸を締めつけるのだった。