九-1
乳首と唇はおなじ色に染まっている。
だとしたら春子の女々は今、どんな色をしているのだろうか──。
紳一は春子の片脚を抱き寄せて、すねから指先までを舐め上げた。
そして春子が喘ぐのを見届けてから手足を組み合わせ、春子の下半身をひっくり返した。
そこにだけ肌の盛り上がりがあり、二重瞼のようにくっきりと皺をつくっている。
紳一は股間を勃起させて、その花を満開にしようと腰を近づけた。
春子は恥じらっていた。浴衣と帯が敷き布団のように広がり、その上で乙女の花を咲かせている。
何があっても拒まないつもりで、ゆるめに脚を開いていく。体はとても熱かった。
このままでは春子に子どもを産ませてしまうかもしれない。
それがわかっていても、どうにも歯止めが利かないのだ。
しばらくは色恋とは縁遠く暮らしていたのに、いちばん近くに恋しい人がいた──。
「春子」
紳一は娘の名を呼び、膣の浅くに指を挿入させた。
「ああっ……あふっ……」
春子のはじけるような肌が揺れ、喘ぎ声が体を越えていく。
「お父さあん……」
春子の深くまで入れていくと、指の根元に愛液輪ができていた。
関節の太い指を休めることなく、二本目の指を入れていく。
春子の口が、「あ」と「う」のかたちをくり返して、声もなく喘いでいる。
春子の股から、しょっぱい雨が降っていた。
そうして二人は立ち上がり、春子が柱にすがって耳をあてる。
そのくびれを紳一が後ろから抱え、しっかりと腰を打ちつけた。
小さな天女が羽衣を脱ぎ落とす頃、二人の結合は一心不乱なものになっていた。
父と娘のつなぎ目から卑猥な音が聞こえる。
ねっとりと絡み合い、水と水とが混ざっている、そんな音だ。
体中から火花が散っている。
ばちん、ばちん、と肉体と肉体とがぶつかり合う音。
春子の膣が紳一の性具を、ねっちょ、ねっちょ、としごく音。
そして、それらをかき消す太鼓の音が、どどん、どどん、と外から聞こえてきた。
暑気払いの太鼓打ちの一行が、家のおもてのほうを通り過ぎていく。
二人はつながったまま体を入れ替え、脚を組み替え、太鼓の音に気持ちを高めていくのである。
紳一が力いっぱいに春子を突けば、がたがたと障子戸が軋んだ。
春子は新しい感覚におそわれていた。
耳と鼻の通りが良くなり、今までになく声を絞って呻いた。
そしてとうとう、二人が愛し合ったあかしを、紳一が春子の中に吐き出した。
一滴たりとも残さず、精液が膣内を満たしていくのだった。