九-2
おもての太鼓の音が遠ざかる頃、二人の荒い息遣いだけがあった。
つながった性器を抜いてみると、放ったばかりの精液がそこからこぼれて、春子の太ももをつたい、尻を這って流れ出た。
「お父さんと私……、愛し合ったんだね」
「痛くなかったかい?」
「そんなことは気にしないで」
「春子」
「うん」
「いつだったか、庭の花壇のところに糸瓜の実が落ちていたんだが、あれは春子がやったんだな」
春子はどきりとした。
「どこでそんなことを覚えてきたんだ」
「違うの……」
春子は父に嫌われると思った。
「ごめんなさい、もうしないから……」
娘が密かに自慰行為をしていたということに、紳一は興奮をおぼえていた。
そして棚に飾られたこけし人形を手に取り、春子に差し出す。
「握ってごらん」
春子の白い手がこけし人形を掴む。
「やってみてくれないか?」
紳一の台詞に、春子は首を傾げる。
「春子がどれだけ成長したのか、それを見たいんだ」
あのときの糸瓜の代わりに、こけし人形を使えと父は言っているのだ。春子もそれに気づいている。
「ふしだらな娘でも……、嫌わないでいてね……」
春子はふたたび紳一の目の前で醜態をさらした。
濡れそぼった部分に視線があたるとまた濡れて、春子は手にしたものをそこにあてがう。
引っかかりがなく、なめらかにすべっている。
手つきは幼稚ではあるが、やっていることは大人の嗜(たしな)みである。
紳一はしっかりと春子を見つめた。
女独りの営みがこんなにも魅力的だったなんて、紳一でさえ知らない世界であった。
春子の目がうっとりしている。いよいよこけし人形が体に呑み込まれようというところだ。
ううっと春子が漏らした。その細い体の中へ、こけし人形がどんどん入っていく。
もはや春子をあやすための玩具である。
そうしたまま体を横たえる春子。気持ちがどこかへ逝ってしまいそうになっていた。
意識の先が見えないのだ。
出し入れを早めて、逝けるところまで逝ってみようとしていたとき、紳一が春子の自慰をやめさせてしまった。
こけし人形は座敷に転がっている。
「僕の花嫁になるということは、こういうことだ」
紳一は春子をそのまま立たせて、乱暴な体位で膣を貫いた。
「ああっ……」
子宮を揺さぶられ、春子はお腹の張りをおぼえた。膣がやぶれそうに熱い。
このまま気絶したとしても、そばにはお父さんがいる──。
そんな思いで春子はされるがままに肢体をしならせて、やがて紳一によって絶頂させられた。
娘がぐったりするのを見届け、紳一もまた二度目の射精を果たした。