第４章-2
全国SMグランプリは、渋谷の街から少し入った所にあるアングラ劇場で行われた。全国のSMクラブやSMバーやSMショーパブなどから、選りすぐりの女王様や奴隷たちが集まっていた。
逆さ吊りで乳房に何本もの針を刺されている人もいたし、また体に公衆便器と大きく書かれ、すさまじい飲尿食糞ショーを演じた人もいた。私はただもう驚愕で見ているだけだった。
「ここには調教され尽くしたベテランたちが集まってるからね」
と美咲が言う。それはごく浅い経験で大会に出ようとしている私への皮肉のようにも聞こえた。
「彩香、そろそろ行くよ」
隣でリサがささやいた。そろそろ私たちの出番が迫っているので、客席から舞台裏の楽屋へと移るのだ。
私たちは楽屋で着替えた。リサはいつもの女王様コスチュームに、そして私は全裸に足枷を付けられた姿に。
「彩香、今日はお前の乳首を洗濯バサミで挟むわよ」
「ひっ！」
一瞬私は顔が引きつった。実はティックリラに出演するようになってから、私は自宅で、練習のつもりで自分の乳首を洗濯バサミで挟んでみたことがあった。しかし痛くてたまらず、すぐに外したのだった。
「嫌なのか」
「いえ、そういうわけではありませんが、何もこういう大会でいきなりやらなくても、店で少し練習してから」
「バカヤロー。ぶっつけ本番がお前の希望だろ。もう洗濯バサミも用意してあるんだから」
リサは、プラスティック製のバネの強そうな洗濯バサミを二個取り出して、にやっと笑った。もう私には拒否権はなかった。
さて、いよいよ舞台。私はいつものように目隠しをされて縛られる。その間も、いつ洗濯バサミで挟まれるのかと恐怖に怯えていた。首輪も付け終わり、完全に拘束されたところで、それはいきなり来た。まず左の乳首から。
「うぎゃあ！」
私は初めて悲鳴を上げた。キュンとくる痛みが走ったのだ。続いて右の乳首。またしてもキュンとくる痛み。しかし私は後ろ手に縛られているから、自分では外せなかったし、リサも外してくれるわけがなかった。
そして洗濯バサミを付けたままで鞭や蝋燭といったプレイが始まる。最初のキュンときた痛みは、やがてじんじんとする痛みに代わっていった。その一方で、乳首から乳房、さらには全身へと、痛みが快楽の波となって広がって行くのも感じた。
私は洗濯バサミだけでオマンコを濡らすことができただろう。だからこの日はいつもの二倍濡れた。
最後にアイマスクを外され、まだ洗濯バサミは付けられたまま、私はリサに首輪を引っ張られて審査員席へと連れて行かれた。
「この淫乱な牝豚奴隷は本当に感じてオマンコをびしょびしょに濡らしております。どうぞ実際に触ってお確かめください」
リサが審査員に言う。
審査員は、高名な緊縛師やSM女優やSM作家たちだった。彼らは次々と私のオマンコを触っては、びしょ濡れであることを確認していった。
楽屋に戻って、リサは洗濯バサミを外してくれたが、こういうものは外される時が一番痛かった。ぺしゃんこに潰された両方の乳首には、まだ洗濯バサミのギザギザの跡がくっきり残っていた。
「洗濯バサミよりもダブルクリップの方がよかったかな」
リサがぼそっと言う。私は首をぶるぶると震わせ、顔から血の気が引いて行くのを感じた。ダブルクリップのバネの強さは洗濯バサミなどの比ではない。それこそ乳首がちぎれてしまうのではないか。
しかしリサがそんな構想を持っているのだとしたら、私はティックリラでリサとペアを組んでいる以上、いつかはダブルクリップで乳首を挟まれることを覚悟せねばなるまい。
さて審査の結果だが、私たちティックリラのチームは、グランプリこそ逃したものの優秀賞を取ることができた。