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『女神様伝説』
【SM 官能小説】

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第1章-1

      第1章

 1982年11月17日夕方、当時横浜女学院高校の二年生だった私は、学校帰りに一人で桜木町で遊んでいて、谷本と名乗る男に声をかけられた。
「ちょっと、君」
「えっ、私ですか?」
「うん。ぼくはこういう者だけど」
 差し出された名刺の肩書きには、SMショーパブ「ティックリラ」チーフマネージャーとあった。
「君、今夜、うちのSMショーに出てみないかね」
「へ?」
 要するに私はスカウトされたわけである。
「いや、急にそう言われましても」
 私は一応は躊躇する素振りを見せたが、心の内はもう決まっていた。実際にSMが体験できる。私はスカウトされたことを喜んでさえいた。私は中学生の頃からなぜかSMにものすごく興味があり、しかも自分はMだと確信していた。ただ実際のプレイは未経験だった。
「一回の出演料として3万円支払うよ」
「あのう、S役ですか、M役ですか」
「もちろんMだよ。Sなんてそんな簡単に急にできるものじゃない」
「M役って、鞭で打たれたりするんですか。痛そうですね」
「嫌なら無理にとは言わない。君を一目見てMの本性が見えた気がしたんだけど、ぼくの見当違いだったのかなあ」
「いえ、見当違いではありません」
 引き下がろうとする谷本を私はあわてて引き止めた。
「ぜひ出演させてください。お願いします」
 私は深々と頭を下げた。
「じゃ、ついておいで」
 私は谷本の車に乗せられ、伊勢佐木町のティックリラというSMショーパブに連れて行かれた。車を下りて、裏口から楽屋に入る頃には、私は体が小刻みに震えていた。期待もあったが、不安と恐怖も大きかったのだ。
 楽屋の中では、20代半ばから後半くらいのショートカットの女が、一人で雑誌を読んでいた。
「リサ、美咲の代役を拾って来たよ」
「ふうん、横浜女学院の子か」
 リサと呼ばれたその女は私の制服を見てそうつぶやいた。
「あんた、SMの経験は?」
「ありません。まったく未経験です」
「でも、リサ、この子は正真正銘の真性M女だよ。一目見てわかった。俺が保証するよ」
 谷本が横から口を出した。
「谷本さんがそう言うのならそうかもね。で、あんた、名前は?」
「はい、吉田彩香と申します」
「彩香か。いい名前だなあ。ステージでもその名前を使おう」
 かくして私は本名の彩香で出演することになった。
 リサと谷本が交互に説明してくれたところによると、今夜はリサがS役すなわち女王様で、美咲という子がM役すなわち奴隷をやることになっていたらしい。ところが美咲が風邪をこじらせて店に来れなくなったため、急遽谷本が代役を探しに街に出て、私を拾って来たのだそうだ。
 少し落ち着いてきたところで楽屋の中を見回してみると、鞭、蝋燭、麻縄、手枷、足枷、首輪、クリップ、針、バイブ等々、SMに必要な小道具がおどろおどろしく雑然と並べられていた。浣腸器やペット用の便器まであるところを見ると、スカトロショーもやっているようだ。
 一方、リサはそんな私をしげしげと見つめていた。
「ふうむ。彩香、ちょっと髪が長すぎるなあ。邪魔になるから上で束ねてくれない?」
「はい、わかりました」
 強制断髪されるのかと一瞬緊張した私はほっとして答えた。そして通学鞄から髪留め用のゴムを出して、するすると器用に上で束ねた。体育の授業の時はいつもこうしているので慣れていたのだ。
「うん、それでいいわ。じゃ、今度は着ているものを全部脱いで裸を見せてみな」
「えっ、ここでですか?」
 私は谷本の存在をちらちらと意識しながら尋ねた。しかし谷本は席を外そうともせず、平然と椅子に座ったままである。リサが言う。
「もちろん、ここでだよ。ここで脱げなかったら、お客さんの前でも脱げないよ。あんた、まさか服を着たままでSMショーをやるつもりだったんじゃないでしょうねえ」
「そ、そうですね。脱ぎます」
 私はわずかに震える手で、まず制服のブレザーを脱いだ。そしてブラウスのボタンを上から外し始めた。そんな私をリサも谷本もじっと見つめている。私はブラウスとスカートを脱ぎ、さらにブラジャーも外してショーツも脱いだ。


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