兎の決意-7
「呆れたわよね。あんな画像を送っちゃう女なんて」
「いや、俺は、その、嬉しかったけどさ。物凄く、ドキドキしたし……」
また訪れる沈黙。
俺は、冷めてしまったコーヒーを口に運び、乾いた喉を潤す。
ツキコは、俺と少し離れたところでベッドにもたれかかるように座っている。
表情は落ちついたように見える。
「わたしも、本当はドキドキしながらメールしてたの。だって、それを見てるのが、タムラ君だったわけだし」
「そ、そうか……」
「ねぇ――タムラ君も、わたしの画像見ながら、してくれた?」
「し、したって……!?」
ツキコは若干俺との距離を縮めるように、ベッドから離れて俺の隣に座り直した。
ワンピースの裾で自分の白い足を隠すように、体操座りをしている。
「わたしは、自分で撮ってるうちに、興奮しちゃってどうしようもなくなっちゃったの。それに――」
「それに?」
「タムラ君も、送ってくれたでしょう? それで、何度も――そしたら、いつの間にか裸で眠っちゃってて」
「もしかして、風邪ってそれで?」
ツキコは恥ずかしそうにコクリと頷いた。
少し間抜けながらも、そんな彼女の姿は抱きしめたくなるほど愛らしく思えた。
「ねぇ……わたしじゃ、オナニー、したくならない?」
「そんなこと」
その瞬間、俺は実際にツキコを抱き寄せてしまっていた。
真面目な彼女の口からオナニーなどという単語が出てきてしまっては、俺も普通じゃいられなくなる。
ツキコは小さな悲鳴を上げたが、それ以上は何も抵抗しなかった。
俺は彼女にこれ以上何をしようというのか。
だって俺はヨウコが好きで、肉体関係もあって、でもヨウコの気持ちは分からなくて。
ツキコは俺のことを何故か好きでいてくれて、俺もツキコのことは嫌いじゃない。
いや、嫌いじゃないというか、好きなのだ。
でも、二人とも好きになるなんて、許されるのだろうか。許されないに決っている。
それでも、俺は――――彼女にキスをした。
しばらく唇をつけて、ゆっくりと離すと、ツキコは少し笑った。