兎の決意-12
やがて、ツキコの荒かった息も落ち着くと目にも光が宿り、彼女を静かに見つめていた俺と目が合った。
やや照れたような顔をして、目を伏せたが、表情はさほど崩していない。
「その……どうだった?」
「どうって……そんなこと聞かれても、何て答えていいのか――でも、すごく」
ツキコはそこまで言って、少し考えるように口ごもった。
「すごく? 気になるな」
「…………すごく――――嬉しかったわ」
微笑みながらそう答えるツキコに、俺はどうしようもなくときめいてしまう。
「だって、わたしが好きな人に、こんなによくしてもらえたんだもの」
俺はもう、居ても立ってもいられなくて、思わずツキコを抱きしめてしまった。
彼女とこうして抱き合えているのが、今はとても嬉しくて仕方がない。
「あっ……い、痛いわ、そんなに抱きしめられたら」
「俺、ハヤカワさんのこと、欲しいよ」
「――――あの……タムラ君て、アレ、持っているの?」
「え? あ、ああ、それは――」
ふと我に返る。アレとは、勿論、アレのことだろう。
ヨウコから余った分を押し付けられて、それを財布の中にいくつか入れておいたのだ。
まさか、使うことになるとは思わなかったが……。
俺はベッドから体を起こして、制服のポケットから財布を取り出し薄型のそれを取り出して、ツキコに見せた。
ツキコは少し、怪訝な顔をしている。
「い、いや、ほら。財布に入れておくと、女運が高まるとかそういうのあるからさ……」
「ふうん……タムラ君も、やっぱり男の子なのね」
「もう一度聞くけど、本当に、俺で?」
「他の人じゃ、嫌だわ」
俺とツキコはベッドに潜り込んだまま、顔だけ向き合っている。
顔を近づけると、ツキコは目を閉じた。俺はそのまま、ゆっくり彼女にキスをした。