五-3
「ここで何をしている?」
ざらっとしたその粗い声を背中で聞いて、春子は思わず息を呑んだ。
言い逃れできないこの状況で、声の主を確かめるために振り向くと、顔見知りの男がそこにいた。
「ませたことをしているじゃないか」
「嫌あ……」
春子は声にならない声を上げ、下半身を隠してかばった。
恐ろしくて思うように声が出ないのだ。
誰か助けて──。
春子は願うことしかできない。
「大人しくしていれば、紳一くんには黙っておいてあげるよ。大事な娘が女々ほじりをしていると知ったら、どう思うだろうな」
「そんな……」
消え入る春子の声。
こんなことがお父さんに知れたら、私は嫌われてしまう。
どうしたらいいの──。
焦れば焦るほど着衣がはだけていく。乱れたセーラー服の下に落ちているのは、さっきまで春子の遊び道具だった糸瓜とアロエだ。
それを見逃さなかった男の口元が歪む。
「二人だけの秘密にしておいてやる。さあ、さっきのつづきをやってごらん。それとも、春ちゃんが助平なことをやっているって、みんなに言い触らしてもいいのだよ」
春子は押し黙っている。
「俺に触られるのと、自分で触るのと、どっちがいい?」
何があっても紳一にだけは知られたくないのだと、乙女心に思うのだった。
そうして春子の体は、男の言われるままに遊びの支度をはじめてしまうのである。
男が顎をしゃくって先を促すと、春子はぎこちない手つきで服の上から胸を撫でた。
男がもう一度顎をしゃくる。
それに従って春子の右手はスカートをゆっくりまくり上げ、白桃みたいな太ももを男の前に差し出した。
下着は足首のところでくたびれているので、女性器だけは手で隠している。
十六歳とは思えないほどの色気と、男受けのする顔立ちの良さは、ポルノ雑誌や成人映画のどの女よりも男を興奮させるのだった。
「もうオナニーを覚える年頃になったのか」
男の言った意味が春子にはわからない。
「声に出して言ってみたらわかる。オナニーだよ」
「……オナニー?」
未成年が言っていい言葉ではない。
だから男は満足げに歯を見せて、春子を威圧した。
たまらずズボンを下げ、どす黒い陰茎を放り出す。
「嫌っ……」
春子は顔を背けた。
「体には指一本触れないと約束する。だから春ちゃんはさっきのつづきをするだけでいい。俺が見ててやる」
春子は返事をしない。
「ならば紳一くんに告げるしかないな」
「そんなの嫌……」
父の名前を出されると、春子の心は折れてしまいそうになった。