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ひとしずくの排卵
【その他 官能小説】

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-3

「ここで何をしている?」

 ざらっとしたその粗い声を背中で聞いて、春子は思わず息を呑んだ。
 言い逃れできないこの状況で、声の主を確かめるために振り向くと、顔見知りの男がそこにいた。

「ませたことをしているじゃないか」

「嫌あ……」

 春子は声にならない声を上げ、下半身を隠してかばった。
 恐ろしくて思うように声が出ないのだ。

誰か助けて──。

 春子は願うことしかできない。

「大人しくしていれば、紳一くんには黙っておいてあげるよ。大事な娘が女々ほじりをしていると知ったら、どう思うだろうな」

「そんな……」

 消え入る春子の声。

こんなことがお父さんに知れたら、私は嫌われてしまう。
どうしたらいいの──。

 焦れば焦るほど着衣がはだけていく。乱れたセーラー服の下に落ちているのは、さっきまで春子の遊び道具だった糸瓜とアロエだ。
 それを見逃さなかった男の口元が歪む。

「二人だけの秘密にしておいてやる。さあ、さっきのつづきをやってごらん。それとも、春ちゃんが助平なことをやっているって、みんなに言い触らしてもいいのだよ」

 春子は押し黙っている。

「俺に触られるのと、自分で触るのと、どっちがいい?」

 何があっても紳一にだけは知られたくないのだと、乙女心に思うのだった。
 そうして春子の体は、男の言われるままに遊びの支度をはじめてしまうのである。

 男が顎をしゃくって先を促すと、春子はぎこちない手つきで服の上から胸を撫でた。
 男がもう一度顎をしゃくる。
 それに従って春子の右手はスカートをゆっくりまくり上げ、白桃みたいな太ももを男の前に差し出した。

 下着は足首のところでくたびれているので、女性器だけは手で隠している。
 十六歳とは思えないほどの色気と、男受けのする顔立ちの良さは、ポルノ雑誌や成人映画のどの女よりも男を興奮させるのだった。

「もうオナニーを覚える年頃になったのか」

 男の言った意味が春子にはわからない。

「声に出して言ってみたらわかる。オナニーだよ」

「……オナニー?」

 未成年が言っていい言葉ではない。
 だから男は満足げに歯を見せて、春子を威圧した。
 たまらずズボンを下げ、どす黒い陰茎を放り出す。

「嫌っ……」

 春子は顔を背けた。

「体には指一本触れないと約束する。だから春ちゃんはさっきのつづきをするだけでいい。俺が見ててやる」

 春子は返事をしない。

「ならば紳一くんに告げるしかないな」

「そんなの嫌……」

 父の名前を出されると、春子の心は折れてしまいそうになった。


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