四つ葉のクローバー-1
優真先輩のアパートを飛び出したあたしは、陽介の元へまっしぐらに走り出した。
……ってな感じならドラマチックなんだろうけど。
実際、形振り構わずに陽介の元に走るには並大抵の勇気が必要だった。
優真先輩は、陽介があたしをまだ好きだと思うって言っていたけれど、陽介の部屋にいたくるみさんの姿を思い出すと、このままアイツのアパートに向かうのは躊躇われる。
このまま陽介のとこに行くか、日を改めて出直すか、そんな押し問答を自分の中でしばらく繰り広げていた。
気付けば傾きかけていた太陽の姿はどこにもなく、墨をぶちまけたような闇が空を覆いつくしていた。
あたしが今いるのは、久し振りに足を踏み入れた優真先輩ん家の最寄り駅。
急行が停まる割りと大きなこの駅も、きっともう利用することはない。
お勤め帰りのサラリーマンが列をなして電車が来るのを待っている駅のホームで、あたしはかなりの時間をベンチに腰掛けて過ごしていた。
下りに乗れば、陽介のアパート。上りに乗れば、あたしのアパート。
どちらかの電車が到着する度に勇気を出そうと立ち上がっては、途端に怖じ気づいて再び座って。
そんなあたしが長い間あまりにソワソワ落ち着かない素振りでいたせいか、駅員さんに
「あの、ずっと電車に乗らないみたいですが、ご気分でもすぐれないんですか?」
と、かなり訝しんだ顔でそう言われてしまった。
うわ、あたしってかなり挙動不審に見えてる?
軽くパニックになったあたしは、こちらを怪しんだままの駅員さんの視線から逃れるべく、タイミングよく到着した電車に、逃げるように飛び乗った。