四つ葉のクローバー-2
◇
「はあ……」
あたしは深いため息を吐きながら、窓の向こうの流れる景色を恨めしげに睨み付けた。
あたしってなんでこうタイミング悪いんだろ。
この電車はあたしん家に向かう、上りの電車。
帰宅ラッシュの下り電車とは違って、余裕で座れる快適な空間。
シートに腰かける乗客の皆さんは、冷房がきいた車内で気持ち良さそうに涼んでいた。
その一方で、あたしの気分はどんより晴れなかった。
陽介に会いに行くつもりが、成り行きとはいえ逆方向の電車に乗ってしまって。
いつまでも二の足を踏んでいた自分が招いた結果だけど、すんなり陽介のアパートに向かえないと、まるで神様が邪魔してんじゃないかって気になる。
「陽介はもうお前のことが好きじゃないから、会いに行っても無駄だ」って。
一旦悪い方向に考え出すと、負の連鎖が始まって途端に不安が押し寄せて、誰かにすがりつきたくなる。
咄嗟に優真先輩の笑顔を思い浮かべたけれど、小さく首を横に振ってそれを頭の中から追い出した。
優真先輩は、あたしがこうやって弱気にならないように、わざと突き放したんだから。
自分のことを差し置いてもあたしの背中を押してくれた、彼の気持ちを無駄にしちゃいけない。
よし、次の駅で下り電車に乗り換えるぞ。
自分に気合いを入れるつもりで、ガラスに映る顔を再び覗き込んだ。
が、その数秒後。
「……やっぱり、今日はやめとこ」
あたしは小さな声でそう呟いた。
そこには、泣きすぎて腫れた瞼と、マスカラとアイライナーが滲んで目元が真っ黒になった女がやつれた顔で映っていた。