第1章-2
かくして全裸になることはなったが、私は本能的に両手で両方の乳首と股間を隠して立った。すると谷本が怒ったような呆れたような声で言う。
「そんな、隠すんじゃなくて。本番では両手を縛られて隠せないんだから。もっと、こう、両手を上に上げて万歳して」
「はい」
私は言われるがままに万歳した。
谷本とリサは私の体の検分を始めた。特に谷本は、私の前にしゃがみ込んで、じっくりとオマンコを観察する。私は恥ずかしくてたまらなかった。しかし心の奥底では秘かにそれを喜んでもいた。
私は、恥ずかしいこと、惨めなこと、情けないことを強制されているという、そういう状況設定に性的に興奮して感じる性質だった。逃げたくても逃げられないという意識が、さらに私を淫らな悦楽へと導いてくれる。それこそが、私自身も自覚し、谷本も一瞬で見抜いたという私のM性の現れであろう。
やがて谷本が言った。
「ふうむ。処女か。今時珍しいなあ」
「私、レズビアンなもので。男の子とは一度も」
私は真っ赤になりながら答えた。
「ははは、レズビアンMか。これはおもしろい。谷本さんはおもしろい掘り出し物を拾って来たよ」
リサはけらけらと笑った。
「さあ、彩香、もういいよ。この体なら使えるわ。開演までまだ時間があるから服を着てていいよ」
「はい」
私はほっと一息ついて、脱いだ制服を再び着用した。
次にリサは私をステージに連れて行ってくれた。ステージと言っても、特に一段高い舞台があるわけではなく、ホールの一画を幕で区切っただけのものだった。幕の向こう側にもまだ客は入っていないようだった。
ステージの中央に、やけに背の高い丸椅子が一個置かれていた。
「あんたはここへ座って待っているのよ。さあ、座ってみな」
リサに言われてその椅子に座ると、足は床に届かなかった。本番では、全裸で足枷を付けられてこの椅子に座り、アイマスクで目隠しされてリサの登場を待つらしい。
「キリスト教徒が祈る時のように、胸の前でこんなふうに手を組み合わせて待ってるんだよ」
そこへ幕が開き、リサが登場して、そしてリサが私の首に腕を回して肩を抱くようにすると、それを合図に椅子から下りて床に立つという段取りだった。
「後はされるがままにしていればいいわ」
「えっ、されるがままって?」
「私があんたを好きなようにいたぶるから、あんたはされるがままにして、自分からは何もしなくていいってこと」
「そんなあ。打ち合わせとかリハーサルとかはしないんですか」
「うん、今日はぶっつけ本番で行こう。SM初体験のあんたの生の反応を見せる方が、お客さんも喜ぶだろうからね」
「そんなあ」
私は顔が引きつった。何の打ち合わせもなく、プレイの段取りも知らされず、何をされるかわからないという恐怖にただ耐えろと言うのか。それもアイマスクで目隠しされた状態で。
「まあ、あそこに置いてある小道具を見れば、だいたい何をされるかわかるだろ」
リサに言われてそちらを見ると、ステージの端に小さなテーブルがあって、その上に真っ赤な太い蝋燭が二本と、長い麻縄、それに太くて厚い革製の首輪が置かれていた。この首輪は南京錠でロックされるタイプのもので、また首輪には1メートルほどの鎖が付けられていた。
それから私とリサは楽屋に戻って谷本と三人で弁当を食べ、しばらく休憩して、そしてそろそろリサが着替えを始めた。リサも谷本がいる前で平気で裸になる。どうやらここではそういう慣習らしい。
リサが着用したのは黒のエナメル革のボンデージ風レオタード。股は超ハイレグで、丈も極端に短く、乳房の半分がやっと隠れるくらいしかなかった。それでも全裸にされる私よりはましであろう。そして膝上まである黒のエナメル革のハイヒールブーツに、肘上まである黒のエナメル革の手袋。
この手袋の手に、リサは鞭を持った。SM初心者用のバラ鞭ではなく、乗馬用の一本鞭だ。それを床に向けて二三回振り下ろした。
パシーン! パシーン!
すさまじい音が響いた。この鞭が私の体に、しかも私の裸体に振り下ろされるのかと思えば、私はもう顔面蒼白でがくがくと体が震えてきた。
「彩香、何やってんだ。お前も早く裸になりなよ」
「は、はい」
私は再び制服を脱いで全裸になり、今度は足枷が付けられた。両方の足首を革のベルトで巻き、その間を20センチほどの鎖でつないだものだ。つまり私はこの足枷が許す歩幅でしか歩けないということだった。