星を数えて act.3-6
友希さんと崇の明るい声が聞こえる。
最悪なことに、友希さんと私の勤務終了時刻は同じで。
目の前数メートル先を歩く二人。
雨はしとしとと降り続いているのに、嫌というほどに幸せに響いてくる、声。
「頑張れ」
消えそうな声で自分を励ます。
崇の声がやけに聞こえる。
きっと、また私の反応をちらちらと見ているんだろうということは予想がついた。
友希さんの笑う声。
私も、あんな風に笑える日がくるの?
雨がザァッと強くなる。ふと顔を上げると、あの十字路の真ん中で二人はキスをしていた。
「じゃあね」
友希さんが崇にそういうと、崇もそれに応えた。私は、知らないフリをして横を通り過ぎようとした。
「叶ちゃんもバイバイ!!」
崇臣に守ってもらってね、とそういう彼女に、精一杯の作り笑いを浮かべて。
きっと、崇から同じアパートに住んでるって聞いたんだろう。
ずるい崇だから、私が崇を好きなことは全く話さずに。
しばらく黙って歩いていると、後ろから『おい』と呼ぶ声が聞こえてきた。
「呼ばれたら少しは歩調あわせろよ」
と、彼は相変わらずヘラヘラと笑って言う。私は、何も答えたくなかった。