男友達と素顔の私-11
「おい、夏織? ……大丈夫か?」
虚ろな目で放心状態の私を心配して軽く肩を揺らす大樹。
私はくすりと笑いながら、重い体を引きずり大樹へと近づいた。
「あは、二回もイったのに、まだこの大きさなんだ?」
そう言って私はそこに口をつけると、
さっきのお返しとばかりに舌で綺麗に舐め取ってあげた。
「んんっ 苦いっ こんな味するんだ?」
「こんな味って…… もしかして精液舐めたのはじめてなのか?」
そう言えばそうだ。
どうしても口にするのがイヤで、元彼と何度も険悪な雰囲気になってたっけ。
なのにどうして?大樹のはイヤだなんて思うよりも先に自ら口をつけてしまうだなんて……
「あはは、私ってば実はすごいエッチな女なのかな?」
「はぁ?いまさらかよっ」
「な、なによっ 別にいつもこんなエッチな女じゃないんだからね?」
「……だからいいって、いまさらそんなフォローいれなくても…… いてっ」
まったく、親しき仲にも礼儀ありという言葉を知らないのだろうか。
こういう時は建前だとわかっていても……
「あ、そっか…… 私ってばそうやって建前で男と付き合ってたから振られたんだ」
ふいにそんな事を口にする私を、訝しげな表情で見つめる大樹。
本音と建前、嘘に嘘を重ねたかりそめの自分、
嫌われるのを恐れて言いたいことも言えないまま、結局惨めに振られた女──それが私だ。
愛さえあればセックスなんて二の次、なんて青臭いことが通用するのは最初だけ。
文字通りすべてを脱ぎ捨て愛し合うための行為を、
身体の相性もさながら、演技だけで乗り切ろうとするほうが間違ってたんだ。
「はは、ホント私ってばかだね……」
「なにひとりで納得してんだよ?」
「ううん、いいの…… こっちの話」
そう言って私は大樹の胸に顔を埋めた。
汗でべとべとになった大樹の身体。
太い両腕、厚い胸板、匂いも抱き締める力も全然違う。
でも、戸惑いなんて微塵も感じ無い。
頭で考えるよりも先に、身体が大樹を好きだと言っているのがわかる。