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縄灯
【SM 官能小説】

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縄灯(後編)-1

…女のあそこの奥には鬼が潜んでいる…「谷 舞子」という女はそれを自ら知っている女なの
ですよ…いや、そんなことに気がつく女はどこにでもいるものじゃない…縄で嫌と言うほど
縛られて、責め抜かれる快楽を心の奥底に刻んだ女だけが知っていることですよ…

縛りつけて、鞭や竹竿で痛めつけるのも、蝋燭で炙ってやるのもいい…悶え抜く女から搾り取
る蜜汁が油浸かりのようにぬめってくると、女のあそこは虚ろに殺気だつ…そのとき女は鬼を
感じるものですよ…

あたしの名前って… 前に言いませんでしたか…キジマっていう老いぼれジジイですよ…



病院の窓の外がほんのりと明るくなったときに、私はいつものように目を覚ます。
遠くに見える街の灯りが、濃い菫色に包まれた黎明のなかで煌びやかな光を不規則に放ち、
どこか脆いモザイク画を描いているようだった。

あのとき私は、確かにあの屋敷に火を放ったような気がする…いや、それが事実だったのか、
幻覚だったのか私にはわからない…でもあの屋敷は今もまだ存在し、キジマは生きていた。
ただ、母は死んだと聞いたが、母がどこでどんな死に方をしたのかを私は知らない…。


ふと窓ガラスに映ったおぼろげな自分の顔を見ると、十七歳のときに刻まれた時間が、何もな
い空虚な私のからだの中にいびつに覗き始める。私の性が溶けた鉛のように膣底にふたたび
澱み始め、その澱みの中で音のない潮騒のような性の嗚咽が木霊する。


三十歳のとき、私は小さなバーで隣に座った男に不意に声をかけられ、彼とつきあい始めた。
それまで何人もの男と性を交わしたというのに、私には恋した男も愛した男もいなかった。

でもその男は、これまでの男とどこか違っているような気がした。私より七歳年上の銀行員だ
という男は、艶やかな髪と気怠い憂いを漂わせた甘い顔立ちをもち、微かな香水の香りが漂う
シャツに包まれた肉体は、凛々しい優雅さとどこか謎めいた冷酷さを思わせた。

「…ぼくに妻がいたら、あなたとお付き合いをしてはいけないのかな…」

男には妻がいた。でも私は何を考えるということもなく彼の交際の申し出を受け入れた。その
とき私は、彼の湿った唇のあいだから覗いた肉色の舌に彼のペニスを感じた。そのペニスを
自分の歯でサクッと噛み裂いたらどんな快感を得ることができるのか…ふと思ったのだった。


そして、彼と二度目に会った夜に私はホテルに誘われた…。

彼は私が衣服をとる前に、自らが先に脱ぎはじめた。小麦色に染まった胸肌は思っていたとお
り引き締まった筋肉の隆起を示し、艶やかな琥珀色の光沢を放っていた。強靱そうな胴体と
滑らかに括れた腰つきは優雅な線を描き太腿へと流れていた。その色艶や肉感はあまりに病的
に洗練されたもので、これまで私が抱かれた男たちとはあきらかに異質の肉体をしていた。

彼は、ベッドに腰を降ろした私の視線をあきらかに意識しながら甘い笑みを浮かべ、最後に
下半身のふくらみをぴったりと覆った薄い黒色のブリーフを脱ぎ捨てる…。

その瞬間、私は息苦しいほどの欲情を感じた…。


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