縄灯(後編)-2
彼はペニスのまわりの恥毛のすべてを剃り上げていた。剃り上げられた地肌の仄かな蒼い翳り
のなかに、大理石の彫像のような彫りの深いペニスが、亀頭を垂れたまま鈍色に息づいている。
深くえぐられた亀頭の肉淵は真珠色の艶をたたえ、のっぺりとした包皮は巻き貝のように捻れ
ながらもしなやかな肉幹を形取り、飴色の灯りの中でぬらぬらとした象牙色の光を放っていた
のだ。
甘い笑みを浮かべた男は、濡れ光ったペニスを誇らしげに私の鼻先に突きつけた。
「きれいなペニスだと思わないかい…いや…きみにそう思って欲しいんだ…」
私は、その言葉に呪縛されるようにペニスの亀頭に指を触れる。そして柔らかくも硬くもない
鈍色のペニスをそっと手のひらで包み込んだ。
「欲しいはずだ…きみは僕のペニスが欲しくて欲しくてたまらない…そうだろう…きみにとっ
てはこれまで触れたことのないペニス…」
彼のその言葉に私は小さく笑った。彼のこのペニスが私の子宮の奥底にいったい何を与えてく
れるというのか…。
私は彼の股間に頬を寄せると唇でゆっくりと彼のものを包み込む。冷たいのにどこかに男の
体温を感じさせる微熱が唇に漂ってくる。舌の上にぬるりとした肉淵が触れる。微かに湿った
ペニスに唾液を少しずつまぶし、舌先で雁首の周りをなぞりあげ、亀頭の割れ目に舌を強く押
しつける。
「慣れたものだ…君という女が、これまで誰とどういうことをしてきたのか、興味があるな…」
彼はそう言いながら私を蔑むように薄く笑った。
ペニスの先端に滲み始めた液からは絡みつくような気怠い匂いが漂い、私の胸の奥を息苦しく
締めつけてくる。肉幹を咽喉の奥深くに頬張りながら、私の胸の奥は、どこか毒々しい酩酊に
無理に浸り込もうとするかのように小刻みに震えていた。
私は、彼のペニスを頬ばったまま静かに目を閉じる…。
十七歳のときのあの記憶…
あまりに濃厚できらびやかな淫蕩の記憶が、私の瞼の裏で無言のまま茫漠として霞んでいる。
まだ青かった私の肌に残る生あたたかいキジマの掌の感触が、昨日のように私の性の空洞の
奥に浮かんでくる。
なにも隠すものがない肌の隅々までをくっきりと露わにした私の青い裸身…
十七歳の肉体に絡んでいるものは、色褪せた黒々とした縄だった。首筋から這う縄は、私の
薄くふくらんだ乳房を幾重にも緊めあげ、縄で搾りあげられた乳肉は、いつのまにかねっとり
とした薔薇色の光沢を放っていた。
淡く伸びた陰毛の毛先から、甘酸っぱい光の雫が艶やかに輝き、微かな潤みによって散乱した
微光は、やがて薄らぐように陰部の割れ目へと吸い込まれ、溶け始めた蜜液の中では桜色の
貝肉がかすかに喘いでいた。
そのとき、ふと聞こえたような気がした…。
耳をすませば確かに聞こえてきた…それは、私が初めて聞いた自分のからだの中に奥深く潜む
鬼の妖蠱めいた咆哮だったのだ。