第1話-8
シンは、ジュリの話を聞きながら、ゼリー状の飲料水500mlの値段を見て驚いた。
「え!これ1本で5000円。高すぎるだろ!」
「そうですか?風俗や、キャバクラにいく事を考えれば、安いと思いますが?これを用意しておけば、これからは私とのプレイだけで済みますよ。ただし1回のプレイで約200ml〜300mlの水分を発散させるかも知れないので、金欠症の時は控えた方が宜しいかと思います」
「ちょっと、お金掛かり過ぎだよ」
ジュリは目を細めて「ふーん...」と、言いながらシンの顔を見た。
「貴方...昨夜、私と会う前に何処にいましたか?」
「え?ドライブしてた...」
「どちらまで?」
「友人と、飲み屋をはしごしていたけど...」
「そのうちの1軒に、キャバクラに行きませんでしたか?」
ギクッっと、焦りを感じた。
「な...何で知ってるの?」
「貴方の電話の検索歴、及びロボカーの発進履歴をみて、おおよその行動は見えてきます。あと、こちらのPCでも、プログラミング解析を、逆読みすれば貴方が過去に購入した物も見れますよ。こんな物もね」
ジュリは、素早い指の動きでPCのプログラミングを打ち込む。そしてシンが過去に買った買い物リスト表から、1つアクセスする。それはオナホールだった。
「わ、何で、それを買った事知っているの?」
「夜中に言ったわよ、貴方の大体のデータは読み込んであると...。私と一緒なら、こう言う無駄遣いは必要無くなりますよ。それに...お金が掛かるなら、私も、お金を稼ぎます」
「ネットで銀行強盗するの?」
「まさか...」ジュリは軽く鼻で笑った。
「私なりの考えがあるのです」
ジュリは、シンを見ながら片手を板の上にのせていた。過去のデーターの一覧表が提示されている画面の1つにジュリが板を軽く叩き、表示されているページにアクセスしてしまった。すると画面から動画が現れて、いきなり裸の女性のが現れ、大きな声で喘いでいる場面が映し出される。
それを見た2人は赤面しながら動画を見る。直ぐにジュリがハッと我に返り画面を隠す。
「シ...シンは見ちゃダメ。あっちへ行って、スケベ!」
「何言ってるんだよ、これが君の考えなんだろ?」
「ち...違うわ!これじゃあないのヘンタイ!」
「僕が過去に見た動画だから、べつに構わないだろ?」
「と、とにかく、ダメ!早くあっちへ行って!」
何かボロクソに言われてる気がしながら、シンは部屋に戻る。
ジュリは、見た目は良いが。どこかワガママな性格がある...優しい子とは、ほど遠いのでは無いか?と、シンは思った。
しばらくして不機嫌な顔でジュリが部屋に入って来た。
「貴方のPCからアダルトサイトを見れない様に設定しました」
「何で、勝手にそんな事するの?」
「だって、そうしないと貴方は、私を見てくれないもの」
「君の考えがよく分からない。君は何を望んでいるの?」
「私は、貴方に尽くしたいの。精一杯の事をしたいのよ...。その為にも貴方には、私の気持ちを理解して欲しい。他の女性でなく私だけを見て欲しいのよ」
出会ってから幾度と無く言っている言葉だった。シンは改めて気付かされた。彼女はシンの事だけを思っている。考えてみれば...自分と彼女は、夜中に出会ったばかり、関係が始まって半日も経過していない。ジュリは素早いデータの解析から、シンのほとんどを知った。しかし...それはあくまでデータ上での事。本人を前にしてみれば、まだほんの触り部分しか知らない。互いに身体を密接したりしたが、恋愛とかの関係が芽生えた訳では無い。
あくまで他人同士、もしくは機械と人間の関係である。
ジュリは本気でシンとの関係を築こうとしている。シンからしてみれば、相手は未知数の能力を秘めたアンドロイド。どんなことまで出来るのか分からない物であった。
(何か、とんでもない者と出会っちゃたな...)
シンはそう思いながら、ジュリの頭を撫でる。
「気が付かなくて、ゴメン...」
「ありがとう」
頬を赤く染めながらジュリは嬉しそうに笑みを浮かべる。