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勇気をもって!
【学園物 官能小説】

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勇気をもって!-2

 気にかかることが他にもあった。親友の里香と真美のことだ。二人とは中学から一緒で、高校に進んでクラスが別になっても休みの日など誰かの家に集まってそのまま泊まり込んでしまう仲だった。特に二年からは同じ進学塾に通うようになり、顔を合わせない日はなかった。それが最近時々塾を休むようになった。学校で会うといつもと変わった様子はない。それでも気になるのは、休む時は連絡もなく二人揃って来ないことだ。
(二人で内緒の勉強をしてるのかしら?)
彼女たちが目指しているのは私立の女子大で、優希はとはコースがちがう。だからそういうこともあるかもしれないと思ったのだ。

「昨日、塾、来てなかったね」
翌日さりげなく訊くと、二人は必ず顔を見合せて、
「ちょっと、用があって……」
その濁し方で共通の『用事』なのは明らかだった。
「何?秘密の勉強?」
里香がくすっと笑い、真美も俯いて笑いを堪えていた。優希は何だかのけ者にされているようで不快になった。
 優希が黙りこんでしまったので気まずい空気が流れた。予鈴が鳴って三人は無言のまま別れた。

 そんなぎくしゃくしたやりとりの数日後、優希は二人に呼び出された。
「昼休みに屋上に来て。話があるの」
登校の途中に里香に言われたのだが、真美もにこにこしていたからほっとした。


 食事を早めに済ませて屋上に行くと、二人は一番奥の網フェンスにもたれて楽しそうに話している。優希はわざとゆっくり歩き出してから、思いなおして跳ねるように駆けだした。いつもと同じようにしようと思ったのだ。
 二人にぶつかるくらい勢いよく、途中から声を張り上げた。
「おまたせちゃん!」
意味もなく一斉に笑った。

 びっしりとひしめき合って林立したビル群。所々に緑はあるものの植え込みのように小さく見える。よく晴れていて、遠く秩父や奥多摩の連峰が夏空に浮かんでいた。

「もうすぐ夏休みだね。今年は忙しくなっちゃうけど」
夏期講習の予定が詰まっている。合間に何日か休みはあるけれど、どこかに出かける気分にはなれない。毎年行っていた父の田舎も今年は行かないことにした。その代わり受験が済んだら家族で旅行する約束になっている。

「優希は遊ばないの?」
里香の声に振りかえると真美の視線も向けられていた。その雰囲気から『話』の切っ掛けなんだと思った。
「遊んでるよ。いままでもそうじゃない?」
答えながら、夏休みにどこかへ行こうという誘いかもしれないと思った。

 少し間を置いてから、里香が口を開いた。
「優希に内緒にしてたことがあるの……」
顔が赤くなって真顔になった。
「実はね……」
里香と真美がそばに寄ってきた。
 それから二人の告白が始まった。

「あたしたち、時々カラオケに行ってるの」
出だしは拍子抜けするものだった。
「なんだ。カラオケなら誘ってくれれば……」
一緒に行ったかどうかわからないけど、三人で騒いだことは何回かある。
「男の人と一緒に……」
「付き合ってるの、二対二で……」
「?……」
どういうこと?
 詳しい話を聞きながら優希は二人の声がだんだん遠くなっていくように感じていた。


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