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一気に静まり返った家に二人。
絢は思った。
出ていく際にテキパキと片付けを済ませた美帆はいい嫁になるなと。
久しぶりの家は落ち着く。
見慣れた家具。
匂い。
自分の定位置。
そして、隣には誠が。
改めて二人きりになると、緊張する。
横目で右にいる誠を見ると、赤らめた顔で流れる音楽に身を任せている。
正直、なぜ誠は自分を選んだのか。
卑下するわけでもないが、もっともっと女性は沢山いる。
自分自身際立って醜いとも思わないが、際立って可愛いとも勿論思わない。
兄の連れは、揃って少し頭がおかしいのかと思ってしまう。
「....ちゃん?絢ちゃん?」
「ん?あ....ごめんごめん....」
「疲れたよね?今日はもう休もう」
「......うん」
誠は立ち上がって自分と絢のグラスを台所に下げた。
自分が洗うと絢は言ったが、休んでていいよと言われたら甘えたくなる。
手を拭きながら、誠は携帯や財布をバッグに詰めだした。
「....誠くん、帰るの?」
「あぁ、うん」
「どうして?」
「え?」
「どうして帰っちゃうの......」
絢は自分の意思とは裏腹に、目に涙が溜まっていた。
恋をすると涙もろくなる、典型か。