11-4
「........っつ......ぁ....いってぇ.....」
左頬の感覚が無い。
左耳まで変な感じがする。
きっと、相当腫れる。
「........元ちゃん」
「....はい.....」
「約束」
「.......はい....」
「次は無いよ」
「.....ぁえぇ?」
美帆の言葉の意味が分からなかった。
全神経が左頬に総動員されているので、正直会話をするのも辛い。
「なに.....え?」
「だから、この次は無いよ」
「は.....はい.....え?」
引きつった顔で美帆の真意を探る。
「え.....フラれた....?」
「ぶたれたの」
「あ、はい......」
「え、フラれたい?」
「いやいやいやいやいやいや、勘弁して......」
「ふふっ......あー、スッキリしたっす」
美帆は上機嫌になり再び鼻歌交じりに頭を寄せた。
現状確認。
フラれてない。つまり別れてない。つまり付き合ってる。
なるほど。ふむふむ。
「っえ!?」
「なーに?」
「みーちゃん、約束破ったら別れるって....」
「言ったよ。言ったけど......別れられるわけないじゃん.....」
赤らめた顔を伏せて話す美保に、元は胸が締め付けられた。