三の交流-1
ある日の午後、千石寛と示し合わせた私は、何度目かの疑似セックスに汗ばむ体をよじれさせていた。
『せんごくさんわたしもういきそうなの』
遠のく意識の中、もはや文字の変換をする余裕もなくなっている私。
『里緒は犯されているのに感じているんだね。里緒の中にたっぷり出してあげるよ。欲しいんだろ?』
『それだけはゆるして』
私は彼のシンボルを想像しながら、滴る膣に異物を突き立てて、子宮に向かって押し込んだ。
粘膜をそぎ落とすような刺激が、背中からうなじにまで這い上がり、震えをおぼえる。
やがて体内の異物に意識を逝かされると、私は果てた。
為すすべもなくその場に崩れ落ちて、うつろな目で天井を仰いでいたところに、次のメールが来た。
『訊きたいことがあるんですが』
アクメの余韻も引かないうちに、彼は尋ねてきた。
『何ですか?』
『ずっと気になっていたんだけど、三月さんはいつも何を使ってオナニーをしているんですか?』
隙を突かれ、私の顔が熱くなる。
『そんなこと恥ずかしくて教えられません』
『僕はオナニーをする女性は嫌いじゃない。むしろそれを隠そうとするほうが嫌いです。性癖にコンプレックスを感じていたら、性そのものが意味をなくしてしまいませんか?』
私は思案した。そしてすぐにこだわりを捨てて、次のメールを送る。
『だいたい指でしてます』
『指だけじゃ寂しくないですか?』
『じつはほかにも色々と使います』
『たとえば?』
『たとえば私はペンを使います。時々です』
『そんな細い物で満足できるわけがないよね?』
『このあいだは、きゅうりでしました。行儀が悪くてすみません』
『いけない奥さんだ。下の口でそんな物を頬張って、よだれを垂らしているなんて。よっぽど美味しく食べたんだろうね』
『言わないでください。恥ずかしくなっちゃいます』
引き出しのずっと奥のほうをのぞかれているようで、私はますます興奮を高めていった。
『すべて喋ったほうが楽になりますよ?』
『美顔ローラーっていう器具、知ってます?』
『もちろんです。石の付いた金属の棒だよね。それで性器の中もマッサージしているわけですか』
『あのかたちが良くて』
『人妻が言っていい台詞じゃないな、まったく』
メールが途切れる様子はない。ふたたび体に火がつきそうだった。
『ちなみにアダルトグッズは持ってないんですか?』
『持ってないけど、興味はあります』
私は彼と本音で向き合った。夫にも打ち明けたことのない本性を、見ず知らずの男の人には平気で言える。そんな自分が可愛く思えた。
『二人で会いませんか?』
彼からのメールにはいつも驚かされる。今回もそう思う。
けれども気持ちはすでに傾きかけていた。
閉め切ったカーテンの向こうに西日が差して、レールや窓枠をオレンジ色に縁取っていた。
『もうすぐ娘が保育園から帰ってくるので、返事はまたいつか』
左手の薬指にはまった結婚指輪に右手を被せて、自分のだらしのなさを痛感していた。
時間だけが急ぎ足で過ぎていった。