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警鐘
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三の交流-2

「ちょっとこれ借りるね」

 私のアパートのリビングで、脚を投げ出してくつろいでいた夏目由美子が、美顔ローラーで頬を撫でている。

それはエッチのときにも使ってるんだけど──。

 言い出すことができず、複雑な思いで彼女の仕草を眺めた。

「そういえば、最近フレンドになったばかりの女の子がいるんだけど」

 私が言うと、夏目由美子は聞き耳を立てた。

「ビアンカっていう子でね、何だか様子がおかしいの」

「どんなふうに?」

「最初のうちは普通にメールしたり、ガールズトークしたり、気が合うなって思ってた。それが最近、休日はどう過ごしてる?だとか、恋人をつくらないの?とか、夜の生活の話とか、とにかくしつこいの」

「なんか、私のまわりにもそういう人がいる。ストーカーじゃなきゃいいんだけど」

「ほら、ブログを炎上させたくないし、あんまり強く拒否できなくて。だからもうフレンドリストから削除するか、サイトの管理者に通報しようかと思って」

 私がはっきり言うと、彼女は煮え切らない表情をした。

「近頃の若い子は何するかわかんないから、もう少し様子を見てもいいんじゃない?」

「そうかなあ……」

「それに、三月さんに勧めたのは私だから、怖くなったら私に相談してくれればいいし。私たち、友達でしょ?」

 彼女は本気で私のことを心配してくれている。それだけで気分が少し軽くなったような気がした。
 持つべきものは『フレンド』ではなく、『友』ということかもしれない。

 そんなことがあって、そろそろ私にも潮時が来たのだろうと、しばらく交流サイトを放置して物思いに耽る日々がつづいた。仮想空間と現実では、やはり住む世界が違うんだと気づいたからだった。

 そうして季節は運命の冬へと移り変わっていった。
 その日は北風が強く吹いて、通りに積もった黄色い落ち葉をすくい上げていた。
 その様子を窓から見下ろしていた私は、いくつかのことを整理しようと携帯電話を握る。

 まずは交流サイトにアクセスして、ビアンカという名前をフレンドリストから削除した。
 さらに、近いうちにここを退会するという意思をブログにアップした。
 そしてもう一つ、はっきりさせなきゃいけないことがある。彼に答えを出すときが来た。
 一時的な感情に流されてはいけないと思いながらも、疑似セックスの先にあるリアルセックスを味わってみたいと願っている。
 数年連れ添った夫とのセックスも望めないのでは、女の悦びを知らないまま渇いていくかもしれない。

 その夜、私はつまらないことで夫と喧嘩した。お互い口もきかないまま別々の部屋にこもり、そこで私は千石寛にメールした。

『会いたい』

 彼に会いたかった。すると私の気持ちを察したのか、メールはすぐに返ってきた。

『僕も会いたい。いつなら会えますか?』

『明日、会いたい』

 私は無茶を言ってみた。そんな急ぎの都合なんてつくはずがない。そう思っていた。

『いいですよ』

 彼はあっさり承諾した。こうして大人の男と女の密約が交わされたのだった。
 翌朝、夕べの喧嘩のことを口実に、しばらく友達の家に泊めてもらうと嘘を言って、私は家庭に背を向けた。

ごめんなさい。すぐに帰るから──。


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