ヘタレ男と愛玩奴隷-4
アメリアは両手を広げて酔っ払っいを背後に庇った。
「じゃ、俺がやる分には大丈夫だよな?」
そこへ、お約束のように現れたのはケイ。
「ケイさん?!」
彼は酔っ払っいの襟首をグッと掴み、そのまま宙に持ち上げた。
酔っ払っいも体格は良い男だ。
多分、他の大陸から来た商人なのだろう。
それを軽々と持ち上げたケイは、にっこりと人懐っこい笑顔を浮かべていた。
「なあ?アンタ時代遅れだな?今頃、奴隷なんて蔑むような奴なかなか居ないぜ?」
ケイはニコニコしながら男の首をギリギリと締め上げていく。
「珍しいもん見たから今日はこれぐらいにしとくけど?次、俺らの前に姿見せたら……分かる?」
酔っ払っいが青い顔でコクコク頷くのを確認して、ケイはパッと手を離した。
ドサッと地面に落ちた酔っ払っい……いや、完全に酔いが覚めた男は腰を抜かしたままヘコヘコと街中に消えていく。
『クーッ!』
その背中に向けてクインの口から塩分濃度の高い塩水が勢い良く吐き出され、男は情けない悲鳴をあげるのだった。
「ケッ……胸くそ悪ぃ……」
ケイは地面に唾を吐くと、アメリアとシーリーに身体を向けた。
『遅イデス』
「これでも走って来たんだよ」
シーリーの非難の言葉にケイは苦笑いして答える。
良く見たらケイは汗だくで、少し息を乱していた。
「大丈夫?アメリア」
地面にへなへなと座り込んだアメリアの前に、ちょこんとしゃがんだケイが彼女を覗き込む。
「……あの……どうして?」
タイミングが良すぎる、と言うアメリアにケイはにっこり笑った。
「シーリーが直ぐ知らせてくれたんだよ。クインを通じてね。何か水の精霊同士はテレパシーみたいのが使えるみたいだ」
ケイは躊躇いがちにアメリアの頬を撫でる。
そこは酔っ払っいが舐めた場所……そこをしつこく撫でるケイに、アメリアは少し顔をしかめた。
「ああっくそっ……腹立つなぁ……アメリアが穢れるっつうの」
コシコシと汚れを落とすように擦るケイに、アメリアは苦笑する。
「私は愛玩奴隷ですよ?もう、穢れまくってます」
だからケイも手を出さないのだと……汚れた女など抱く気にならないのだと……さっきの事で目を背けてきた事に気づき、アメリアは顔を伏せた。
「……本気で言ってる?」
ケイが動きを止めて低い声で聞いてきたので、アメリアはそっと顔を上げる。