第八話(行為なし)-2
「そうなのか?まだフィギュアやアダルトゲームは捨てていないみたいだが…」
「僕がオタクだったのは中学までなんですよ」
「それはもう聞いた。で、捨てないのか?」
「う…その、ですね…」
オタクは卒業したが、そう簡単に捨てられる物ではない。
将来プレミア価格とかつくかもしれないし!
「フィギュアはまだいい。だがアダルトゲームは捨ててほしい」
「うぅ…」
「その分、私の体を使っていいから…な?」
「気持ちは嬉しいですけど、その…エロゲーにはエロゲーの魅力があってですね。抜きゲーから泣きゲーまで多種多様なんですよ」
「よくわからないが、捨てたくないのだな?」
「はい…」
「そうか…ならHはお預けかな…」
死刑宣告を受けた。
「えぇ!?ズルいですよそんなの!」
「だってそのエロゲーとやらで事足りるんだろう?」
「や、あの、捨てないだけでやるわけではなくて…」
「やらないなら捨てればいいではないか」
「だからそれは、女の人がバッグを買っちゃうみたいなアレで…」
「私はバッグに興味がないからわからないな。バックならともかく」
「さりげなく下ネタ挟まないでくださいよ…」
ともかく、エロゲーを捨てる捨てないについての話はまだまだ長引きそうだった。
***
連休明けの5月7日火曜日。
僕たちはドキドキしながら登校した。
「桃園、大谷。今すぐ職員室にこい」
校門で待ち構えていた教師に捕まり、半ば無理やり職員室へ赴く。
「もう一度聞くが、あの動画は隠し撮りされたものなんだな?」
セックス見せつけ動画に関しては聞かれなかった。
「はい」
僕より先に香澄さんが頷く。
「大谷が仕組んだことではないんだな?」
「僕にそんな趣味はありませんよ」
そう言うと香澄さんに腹を肘で突かれた。
どの口が言う、みたいな顔をしていた。
「わかった。じゃあその件は警察に話しても問題ないか?」
「お願いします」
「うむ。だが不純異性交遊は校則で禁止されている。知ってるな?」
「はい」
でも、と僕は続ける。
「不純じゃありませんよ」
「そうだな。先生、私たちは結婚します」
「結婚ってお前ら…遊びじゃないんだぞ?」