投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

今宵、満月の夜に
【その他 官能小説】

今宵、満月の夜にの最初へ 今宵、満月の夜に 1 今宵、満月の夜に 3 今宵、満月の夜にの最後へ

今宵、満月の夜に-2

「うぅ〜ん。」
枕元に光が射し込んで眩しい。
今・・・何時だろう?時計を見るためにゆっくりと目を開ける。
見慣れない天井、部屋の風景。
がばっ、とベットから体を起こし周りを見渡す。
「やっとお目覚めか?」
低い男の声が後ろから聞こえ、慌ててそちらに視線を向ける。
がしがしとばすタオルで頭を拭きながら上半身裸の男が近寄ってくる。
「あなた・・・誰?」
昨日の記憶を一生懸命探りながら問いかける。
「・・・おいおい、ご挨拶だな。危うく俺が貧血になりそうなくらい血をたんまり吸っておいて。あれが普通の人間だったら間違いなくお陀仏だ。」
男はそう言いながら、頭のタオルを取り長めの前髪を掻き揚げる。
・・・少しきつめの瞳にすっと通った鼻筋。薄い唇。
途端に昨日のことを思い出す。
昨日と違うのは、背が170くらいだったのが軽く180を超えているであろうこと、色白だった肌が浅黒くなっていること。
そして何より・・・美人のお姉さんが美形のお兄さんに変わっていた。
っていうか、どういうこと?昨日、血を貰ったのは女ではなく男?いや、でもあの味は間違いなく女の処女のモノで・・・。
頭の中でいろいろくるくる回ってパニックを起こしそうになる。
「・・・もしかして、同類に会ったのは初めてか?」
気付けば自分の横に座り」、顔を覗きこんで聞いてきた。
間近で美形を見ればそりゃあドキドキもするわけで、慌てて男との距離をとる。
「どう・・・るい?」
なんとか男の瞳を見ると
「あ・・・グリーンアイ。」
月明かりしかなかった昨日は気付かなかった瞳の色。
「そ、俺はウルフ一族だ。だけど、あんたもだろうけど純血じゃない。どうも満月の夜は狼ではなく女になっちまう。」
にっ・・・と笑顔を見せる。

同類・・・その言葉に変な違和感を感じる。
私は、物心ついた時にはこの世界に一人ぼっちだった。
いつ自分が生まれたのか、親の顔とか兄弟とかそんなの知らない。
だから、この名前だって自分を拾ってくれた女の人が付けてくれたもの。
自分の存在を初めて受け止めてくれた、たった一人の・・・。
今は、もうこの世に存在しないーーー。

「んんっ・・・!?」
突然唇を塞がれる。
人が昔を懐かしんでいる時に、この目の前の男がキスをしてきた。
「な・・・っにすんのよ!」
思わず男を突き飛ばし、唇をごしごしと拭う。
「・・・お前、もしかしてこういうの初めてか?」
少し困惑したような顔で、真っ赤になってしまったであろう私のかおを見る。
「・・・は?こういうの?」
きょとん、とする私を少し興味深そうに見た後突然両手首を掴み、ベットに押し倒す。
「こういうの。」
まるで悪戯を仕掛ける子供のような笑顔を見せる。
「ちょ・・・離してよっ。」
両手の自由を奪われ、その手から逃れようとするがビクともしない。
「ふぅん・・・。もしかして、あんた初めて?」
「初めてって・・・っ。」
耳元で囁くように聞かれ、私は顔を赤くすることしかできない。
「へぇ、こんなかわいいのによく今まで無事だったな。」
大きなお世話だ。初めてが悪いっていうの?だって、だって人間でないいわゆる「同類」と出会ったのはこいつが初めてで。人間とっていうのはないでしょ?普通。人間は食料なんだから。人間が豚や牛とエッチするかってことなわけだし・・・。


今宵、満月の夜にの最初へ 今宵、満月の夜に 1 今宵、満月の夜に 3 今宵、満月の夜にの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前