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は「よし、やるか。この二人のアカウントも確認したし。で、てっちゃん、借りたいモノあるんだけど」
て「え?」
鉄弥は自分の家までお使いに出た。
先に言ってくれれば暇な時間に取りに行ったのにと愚痴っていたが、素直に了承するのが鉄弥のかわいいところ。
暁生と鉄弥の家は徒歩10分程度なので、物を揃える時間を入れても30分くらいだろう。
その間に二人は手袋など細かい物を揃え、ナプキンでその二人の携帯をくまなく磨いた。
程なくして鉄弥からメールが入った。
真紀がクラスメイトに聞き、得た住所を転送してきたのだ。
メールの最後には、あと5分程で着くと添えられていた。
「あっちゃん、住所来た。てっちゃんあと5分くらいだと」
「よーし。マップで下見しておこう」
「木下は下馬......高畠は松陰神社の方か」
「一気にやっちまおう」
そこに汗だくの鉄弥が戻ってきた。
は「お疲れ。すげぇ汗」
て「走ったからな......あっちーよ...」
あ「戻ってきて早々に悪いんだけど、着替えてすぐ出よう」
て「マジかよ!ってか、え、これ着るの?!」
あ「その為に取ってきてもらったんだよ」
鉄弥が家まで取りに帰ったのは、鉄弥が中学時代に使っていた野球部のユニフォームとバット、グローブ、シューズであった。
て「マジで?!もう小さいぞこれ...」
あ「でも野球少年を装った方がより自然でしょ?いい具合に汚れてるしね」
て「うわー.....」
あ「行くのは俺とてっちゃんね」
て「やっぱりかぁ....こういうのは俺かぁ....」
あ「だっててっちゃんがこの中で一番少年っぽいし」
て「喜べねーな...」
は「あれ、俺は?」
あ「お留守番。げんちゃん髪長過ぎだしピアスでか過ぎだし背も高過ぎ」
は「.....はい」
あ「という訳で俺とてっちゃんね」
は&て「了解...」
あ「てっちゃん、携帯は電源切って置いていこう。げんちゃん、留守番よろしくね」
は「おう。頼んだ」
あ「楽勝」
て「あ.....やっぱこれ小さい.....あ、しかもちょっと臭い....」
あ「マジかー....」
二人乗りで走っていく野球少年を見送った元は、暁生の部屋で帰りを待った。
ここに来て何も出来ない自分をはじたが、絢の為に、誠の為にここまで動いてくれている二人を誇りに思った。