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崩壊、エモーション。
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崩壊、エモーション。-2

「もう終わり?」
立ち去ろうとしていた三人が動きを止める。
「…何?」
「もう終わりなのかって訊いてんの」
「何言ってんのアンタ…」
「もっと楽しい事してよ。こんなありきたりな事じゃなくてさ」

これはゲーム。
イジメというゲームをもっと楽しんで?

「気持ち悪りーんだよてめぇ!さっさと死ねよ!」
「私を殺してよ…死にたくなると思わせて?こんなんじゃ死んでも死にきれない」
私が椅子から立ち上がると、三人とも一歩後ろに引き下がった。
「やだ…来ないでよ…アンタ狂ってるよ!」
そう叫んで科学室を出ていった。

狂ってる?
どっちがよ。
てめぇ等の所為で私は狂ったんだよ。
分かってんのかよ。

今度は、私がアンタ等を狂わせる番。

私は目の前の机の上に散らばっている煙草とライターを回収し、ビニール袋に詰め、煙の充満した部屋を出た。
ドアの開いた教室に戻ると長瀬達三人が立ち話をしていたが、私に気付く様子は無かった。
「長瀬」
私がそう低い声で呼ぶと、彼女は肩を小さく震わせて首だけで振り向いた。
「コレ」
手に持っていた煙草入りの袋を長瀬の顔の前につきつけて言った。
「忘れ物。それとも先生に言っちゃおうか?」
「…やめてよ」
長瀬はそれを私の手から引ったくり、自分の鞄に突っ込んだ。
「何なんだよその勝ち誇った顔!そーゆーのがムカつくっつってんの!」
彼女はそう叫ぶと私の首を両手で掴み、壁に押し付けた。
私はただ彼女を睨むだけ。
「もう何しても無駄だよ」
彼女の指に込める力が段々強くなっていく。
「殺してやる…」
勝手にすれば?
もう私は何も感じない。
何も思わない。
「もっと苦しめよ…っ」
「無理だよ…もう、痛みも感じない。何も思わないんだ。好きも嫌いも。感情が…壊されちゃった」
「亜紀、先生来る!」
長瀬はほとぼりが冷めたように私の首から手を放し、二、三歩退いた。
「感情が…壊された?何それ、うちらがやったってゆーの?馬鹿じゃない!?そんなのアンタがさっさと死なないからじゃん!!」
一番前の席の上に置いてある自分の鞄を肩にかけ、私は言った。
「…じゃあ…私が死んだら、どうするの?アンタ等楽しくなくなるじゃん?それとも次のターゲットはもう決まってる?」
「それは…」
「死んでほしい、だけど死なれちゃ面白くない。その矛盾、私を狂わせた原因。その矛盾から生まれた行為がイジメ。そうじゃない?」
それだけ言うと私は教室を出た。



校門前の信号まで歩いてきた時、走ってきた長瀬が後ろから叫んで私を呼んだ。
「ちょっと待てよ山崎!」
私はシカトして赤く光っている信号を渡った。
左方向100m先にはデコトラが猛スピードでこっちに向かって走っている。
私が渡りきったところで長瀬がもう一度叫んだ。
「山崎!聞こえてんだろ!?止まれやボケ!」
次第にトラックの車輪の音が大きくなる。
「そーゆー態度がムカつくって…っ」
クラクションの音に被さり長瀬の声は聞こえなくなり、代わりにドスンと鈍い音が耳に入ってきた。
振り向いた私の視界には彼女の姿は無く、二人のクラスメイトと走り去っていくトラックしか見えなかった。
「亜紀…?」
「亜紀!!」


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