鳴海の大魔神-4
男性が店内に駆け込んできた。
「通り魔だ! 警察! 警察に電話して!」
関谷はたらこスパを食べていたフォークを持ったまま、すくっと立ち上がった。
「たっちゃん!」
「俺に任せろ!」
関谷はあっという間に飛び出していった。
あおいと紗綾は、関谷を追って、店の外に出た。鳴海駅の方向から、数人が顔をひきつらせながら、こちらに駆けてきていた。二人は辺りに注意を払いながら、駅に向かった。
関谷の背中が見えた。駅の入口や歩道に人が倒れていた。四人、いや、五人だ。呻き声が微かに聞こえる。倒れている女性の胸から鮮血が衣服に滲んでいた。
駅から洩れてくる明かりや街灯に照らされて、一人の男の姿が見えた。白髪頭で着流し姿だ。男は長い日本刀を両手で持って、わけのわからない言葉をわめき散らしていた。
関谷はゆっくりと日本刀男に近づいていった。あおいと紗綾は、50メートルくらい離れたところで立ち止まり、関谷の動きを見つめた。紗綾たちの前方、路地から関谷の動きをじっと見ている若者の姿も目に入った。
「警察だ。刀を捨てなさい!」
「やかましい!俺はヤクが欲しいんだ!」
男は白刃を持った手を上げた。
「死ねや」
関谷に斬りかかった。危ない! 金属と金属がガッチーンとぶつかる音がした。関谷はフォークで男の刃を受け止めたというのか? 次の瞬間、関谷の右足が半円を描き、男の腕を打った。「あぎゃー」と悲鳴を上げる男。白刃は地面に落下。関谷の体は宙に舞う。膝だ! 膝が男の顔面を直撃!
男は鼻から血飛沫を吹き出し、前のめりの態勢で地面に這いつくばった。