王子様の憂鬱-8
とりあえず、父王に報告をしよう。
クラスタ統治に全力を注ぐ決意が出来た、と……その為に経験を積んで無事に帰ると。
それから、感謝の気持ちを伝えよう。
信頼してくれて、誇りに思ってくれてありがとうと。
言葉にしなければ伝わらない事は、思った以上に多いのだ。
(ちょっと照れ臭いけどな)
デレクシスは窓から見える遠くの海を眺める。
海を見てもいつもみたいに哀しい気持ちにはならない。
忘れるワケではないが、後ろを向いて進むのは難しい。
ちゃんと前を向いて、しっかりと地面に足をつけて進まねばならない。
(ウィル……君が誇りに思えるような男になるよ)
新しい仲間と新しい場所に向かう……デレクシスはネックレスをぎゅっと握る。
そして、顔を戻したデレクシスの表情はキラキラと希望に満ちていたのだった。
ー王子様の憂鬱・完ー