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ゼビア・ズ・ショートストーリー
【ファンタジー その他小説】

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ヘタレ男と愛玩奴隷-1

 この世界は東西南北の4つの大陸と、その中心に位置する島国とで成り立っている。

 世界の中心、島国ファンはどの大陸からも程好い位置にあり貿易の中心になっていた。
 自分の国の名産品を売りさばき、他国の品を買い付ける。
 そうやって商売をした後は、1泊してゆっくりと身体を休めるのがファンに商売にくる者達の楽しみだった。

 そんな者達の中で最近話題になっている食堂がある。

『海かもめ食堂』

 古びた作りの食堂は、これまた古びた夫婦が営んでいる食堂で、魚料理が絶品だと隠れた名店だったのだ。
 それがここ数ヵ月で行列が出来る程の人気ぶり。

 ケイはその行列を眺めつつため息をついた。

『クク(どうしたの?)』

 パートナーの水の精霊クインがケイの頭の上から顔を覗く。
 白いイルカの姿をしたクインがのっぺり頭に張り付いているのは、正直妙な姿だ。

 魚屋を営むケイの家は、北の海を中心に漁をしてそれを売っている。
 3日に1度漁に出て、戻ると店にお客が殺到する。
 そのまま持ち帰ったり、冷蔵装置のある魚屋に置いておいて使う時に取りに来たりと……その日は忙しいが、次の漁に出るまでは基本的に暇。
 そんな暇な午後は投網の修繕をしたり、青年団の仕事をしたりするのだが、ここ数ヵ月はボケッと行列を眺める事が多くなった。

「ん〜…頑張ってんなあ〜って思ってさ……」

 行列を作っているのは男ばっかり……男達の目当ては数ヵ月前から『海かもめ』で働いているアメリアだ。

 ふわんふわんのシルバーブロンドに綺麗なアイスブルーの目。
 18歳にしては小柄な身体で、くるくると店内を動き回る姿はまるで小動物。
 手際が良くて一生懸命働く彼女は、働きながら夜間学校に通う苦学生でもある。
 可愛いだけじゃない所が人気の秘密だ。

 そんなアメリアに惚れている男、ケイ……彼女にプロポーズはしたが、彼の意思で返事を保留してもらっている。
 何故なら、彼女は元奴隷……奴隷から解放された途端に結婚だなんてのは可哀想すぎる。
 もっと自分の意思で生きて、もっともっと楽しんで……それから返事をくれ、とカッコつけて言ったは良いが正直心配だ。

 アメリアを狙う男共のデレた顔に、獣の様な視線。

(ざけんな。ありゃ俺の女だ。手ぇ出したらぶっ殺すぞ)

 と、内心かなり穏やかではない。



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