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おもひでの場所
【悲恋 恋愛小説】

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おもひでの場所-3

「でも、僕が学徒出陣しなければならなくなって、彼女に別れを言う前に出陣してしまった。彼女を一生悲しませているかもしれません。」
男性は、更に続けた。「彼女の名前は、登美子という名前でした。」
「――!!」
登美子に衝撃が走った。
「今は何処に居るのか分かりませんが…、僕は、まだ、彼女を探していますよ。60年も昔の事ですから、もう無理だと思いますが…でも、何年経っても、愛している気持ちは変わりませんね」

フッと、男性は笑った。登美子は、動揺を隠せない。
「すみません、喋り過ぎましたね。では、僕はこの辺で」

男性は立ち上がり、歩き始めた。

登美子は、思い切って言った。
「見つかるといいですね…、いえきっと…見つかりますよ…!」

目には涙が溜っていた。
「ありがとうございます、頑張ってみますよ」
男性、いや清次は登美子に微笑んだ。
後ろ姿が、あの日、清次が少年だった面影が重なる。
登美子は「清次さん、私は…、登美子は…、此処にいます」と心の中で何度も叫んだ。目に涙を流し、60年前の記憶を蘇らせながら―。
(Fin.)


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