目が覚めて-1
私は病院のベッドの上で目を覚ました。頭には包帯が巻かれている。
どうも鳥永市の市立病院のようだ。
私は地震が来たことまでは憶えていたが、どうしてここにいるのか記憶はなかった。
看護師さんが来て私に言った。
「目が覚めたの? 悪いけれどベッドが足りないから、廊下の方にに移ってくれるかな」
それに返事をしようとしたが、私の美しいソプラノの声は出なかった。
代わりに喉が潰れたようなしわがれ声が口から漏れた。
泥水を飲んだように口の中が気持悪い。体の調子も最悪だ。
お腹がすいているはずなのに食欲も全然ない。そしてやたらふらふらする。
間もなく私は魚永市内の特設避難所の方に移った。
こうして苦しい私の避難所生活が始まった。
その後数ヶ月過ごしてわかったことは、私の家族は家ごと津波で流されて全員行方不明になったってこと。
親友の千佳も同様で全く消息をつかめない。
学校に行きたいけれど学校も目茶目茶に壊れていて再開の見通しもない。
そのうち両親や兄の遺体が確認された。私は泣くに泣けなかった。
私は被災孤児となってしまい、絶望の毎日だった。
お情けで食事と最低限の衣服は支給されるが、それ以外は何もない毎日!