5-1
「まっちゃん、遅くね?」
大きな欠伸をしながら、元は暁生に聞いた。
閑散とした放課後の廊下にしゃがみこむ暇そうな、いや、確実に暇な二人。
「確かに。説教かな」
「マジ?煙草バレたとか?」
「いや、わかんない」
「先に三茶行かね?」
「いや、そこは待ってあげようよ....」
「俺もテツに付いてけばよかったなぁ」
「てっちゃん、風邪で病院行ってるんだよ...」
四人で三茶に行く予定だったが、鉄弥は風邪気味とのことで中抜けで病院。
誠は担任から呼び出されおり、その間二人は待ちぼうけをくらった。
「あーあ....眠ぃ....」
「げんちゃん、昨日バイトだっけ?」
「うん」
「時給いくら?」
「1100円」
「いいねぇ」
「俺は20時から26時。まかない有り」
「そっかぁ。いい感じだねぇ」
「あっちゃんバイト辞めたんだっけ」
「うん。辞めたてホヤホヤ」
「なに、また新しいバイト探し中?」
「そう。最近さ、俺彼女できたじゃん?」
「あー、大学生の?」
「そうそう。大学生と付き合うなんて初めてだし、やっぱりプレゼントとかちゃんとした物あげたいじゃん」
「でもあっちゃんち金持ちじゃん」
「そんなことないよ。生活費は自分のバイト代だけだし。それに、やっぱり大学生だから。下手なものはあげられないよ」
「あのね、あっちゃんね、その考えは素晴らしいと思うんだ、僕。でもね、きみ、前からさ、ちょっと貢ぎ過ぎる傾向にあると思うんだよね」
「え、そうかな?」
「そうだよ気付けよタコ。カモられてんだよ」
「そんな言い方しなくても....。それに、げんちゃんだって彼女さん大学生でしょ?同じじゃん」
「一緒にしないでもらえる?チラっとしか見たことないけど、あっちゃんの今の彼女、ビッチっぽいし」
「ひどくねー!?」
「....でかい声出すなよ....。あ、まっちゃん来たぞ」
左手で頭を掻きながら、露骨にダルそうにこちらに向かってくる。
右脇に書類の束を挟んでいる。