5-3
(......部活の連中か)
大して気にも留めず再び鍵を探していると、
「......いや!やめてよ!」
はっきりと、誠の耳に届いた。
明らかに女子の叫び声だ。
「.....マジかっ!」
一切の躊躇無く用具室のドアに思い切り蹴りを入れた。
預かっていた書類はぶちまけてしまったが、それどころではなかった。
吹っ飛んだドアの向うには、棚を背にして羽交い絞めにされている女子。
暗がりでよく見えない。
しかし。
一瞬目を疑ったが、絢だ。
信じられなかった。
「.....絢ちゃん....?」
携帯を片手に、こちらを振り向いたまま硬直している同じ制服の男子が二人。
「....誠くん!!!」
絢の叫びが耳に入るより早く誠は一人を殴り飛ばし、逃げようとしたもう一人にも後から飛び掛って馬乗りになった。
状況は理解出来なかった。
しかし、明らかに絢は泣いていた。
絢の声は、助けを求めていた。
誠にとっても、絢は妹のような存在だ。
どんなに危険な遊びでも、元の後ろから必死に食らい付いてきていた、妹であり大切な友達。
誠は、狂った様に殴り続けた。