4-3
(........美帆さん...どうしよう......かわいい....)
目の前で絢とじゃれ合っている美帆。
そんな二人を優しい目で眺めている元。
真紀は思った。
(......負けっす.....)
会ったこともなかった美帆に対して抱いていた勝手な競争心は、ここに来て根こそぎへし折られた。
「真紀ちゃん、どした?」
視界に元の顔が入り込んで、真紀は我に還った。
「あ...ううん。なんでもない...」
「ほんと?口数少ないからさ」
シートに腕を乗せて覗きこんでくる元との近さに赤面しつつも、悟られまいと視線を落とす。
「顔赤いよ?酔った?」
言いながら、元は真紀の頭に手を乗せた。
今にも目玉が飛び出しそうな位に興奮していた真紀だが、あくまでも抑えて答える。
「....ははっ。そうかも。酔っちゃったかな..」
元に対して、とは言わない。
しかし、頭に掛かる心地よい重さから逃げられない、真紀。
(元くんの素振りも何もかも.......罪だよ.......)
結局渋谷に着くまで、真紀は元の手に収まったままだった。