巡り巡る世界-8
「なにそれ?人間じゃないから何なの?それってそんなに大事なコト?」
カリーは顔を上げたゼインの額に軽くデコピンしてニッと笑う。
「ゼインはゼイン!でしょぉ?」
「……カリー……」
ゼインは額を擦ってカリーを見つめた。
やっぱりカリーは天使だ……ゼインが不安になると必ず救ってくれる。
「やっぱ、お前大好きだぁっ!!」
「にゃあぁ?!」
ガバアッと抱きついてきたゼインに、カリーは為す術も無く押し倒された。
「ちょっ……ゼインっんんっ?!」
そのまま情熱的にキスをされたカリーはゼインの下でジタバタ暴れる。
「発情するな、馬鹿チビ」
そのゼインの首根っこを掴んで引き剥がしたのはアースだった。
こめかみ辺りに絆創膏、両腕には包帯……なんとも痛々しい姿だ。
「あ……それ、ごめん」
自分が付けた傷を見てゼインの耳がへにゃんと垂れる。
「全くだ……お前の方が重傷だったのにもう治りやがって……だが、まあ気にするな。お前の力を試したかっただけだし」
アースはゼインを離すとヒラヒラと手を振った。
「俺の?」
「そう。で、合格だ」
そういえば、さっきもグロウが言ってたな、とゼインはカリーを見る。
「なんかね。ゼビアに滞在中のカイザス国の王子様を、クラスタに連れてって欲しいんだって」
実は、前々から南の大陸でクラスタの事が問題になっていた。
異常に強力な魔物が上陸してくる土地を放置していたら、いつか取り返しのつかない事になるのではないか……と。
案の定、クラスタから上陸してくる魔物の行動範囲が徐々に広がっているらしい。
今まではザルスが居座って『核』を集めていた。
全くその気は無いのだが、結果的にザルスは南の大陸を守っていたのだ。
意図しない所で大迷惑だったり、役に立ったりする奴だなあ、とゼインは苦笑する。
かと言ってクラスタのような土地を、どこかひとつの国が責任持ってどうにか出来るものじゃない。
そこで、南の大陸の各国が出資しあい巨大な要塞を作る事になった。
魔法大国ゼビアの協力も得て、強力な魔物にも対抗出来るであろう要塞だ。
そこの責任者として選ばれたのが、カイザス国の第3王子デレクシス。
精霊人である彼は、現在ゼビアで魔法の勉強中なのだ。
「転移魔法で帰ってくりゃ良いんじゃね?」
その方が安全で速い、と言うゼインのもっともな意見にアースは温く笑う。