3-5
「いつも正門前ガードレールで煙草をふかしているクールな男がいる」と、元は一部で話題になっていた。
その噂を小耳に挟んだ美帆は自分の彼氏であることを誇らしく思ったが、同時に少しの不安感と嫉妬に苛まれた。
(やっばい....遅くなっちゃった!)
美帆は構内を小走りで駆け抜ける。
(また待たせちゃってるかな....あっ)
正門の向うに、ガードレールに腰掛けている元の姿。
その周りに、女子が三人、囲むように立って話をしている。
(またかぁ......)
周りの女子に目もくれず、美帆は声を掛けた。
「元ちゃん!ごめん、待った?」
「うっす。お疲れ。そんなに待ってないよ。この人達が相手してくれてたし」
美帆は三人に軽く会釈した。知らない顔だった。
他の学部か、先輩か後輩か。
そのうちの一人が
「またねー、はじめちゃん!」
と言って、三人は去っていった。
「みーちゃん、お疲れ。これ」
そう言ってアイスコーヒーを差し出す。