FATE NO.1-2
そう、彼女はとても可愛く、スポーツも出来て頭も非常に良く、全校男子の憧れの的なのだそうだ。
「俊って陸上馬鹿だからなぁ・・・しゃーねぇか。」直喜の言う通りだ。オレは陸上の全国インターハイを目指して一年から死ぬ気で毎日練習をしていたから、女の子に興味があまりなかった。
だから小川の存在を全く知らなかった。
そしてオレはこの時、小川を見て知った瞬間今まで味わったことのないような感覚に包まれた。
この感覚は何だろう・・・・・・
そして、後に彼女が、小川実香がオレの人生に物凄い影響を及ぼすとはこの時は考えても無かった。
始業式が終わり担任が決まるとその日はあっけなく終わった。
一つの行事が終わると時と言う物は速く過ぎ去る。四月、五月、六月とすぐに過ぎ去った。
初めに小川実香に感じた変な感覚は月が経つと共にさらに強くなっていった。小川と掃除の時話したりするとさらに変な感覚は強まる。が、四月から六月の間にオレは地区予選、地区本選、近畿インターハイと全て一位になり、八月に夢の全国インターハイを控えていた。そのためその感覚の事は気にしない振りをしてインターハイだけを考えていた。
そんな矢先の七月。今まで変な感覚を気にしない振りをしていたお陰で速く進んでいた時の針が、急にスピードを落としていく出来事が起こった。
七月のある日、外は暑いのにオレはグランドをひたすら走っていた。
もうすぐ夏休み、そして全国だ。その思いからか練習は苦痛では無かった。そして練習しているといきなり校内放送がかかった。
「山岡〜三年の山岡〜担任の静谷が呼んでいる、すぐに職員室にこい」
放送で職員室に呼び出されたオレは焦っていた。「(オレ何か悪いことしたかな・・・買い食いはしてないし、喧嘩はしてないし)」
そう考えていると、担任の「静谷美和(しずたにみわ)」が現れた。
「山岡、ごめんね、いきなり呼び出して。実は山岡に頼みがあってね」
どうやら悪い話じゃないようだ。オレは一安心する。
「確か山岡はフランス語話せたよね?」
確かにオレは両親が三度の飯よりフランスってくらいフランス好きだから確かにフランス語は話せた。
「話せますよ。それがどうかしました?」
そう聞き返すと静谷先生はオレに提案してきた。「実は今度この学校から男女合わせてふたりフランス語の暗唱コンテストに出てほしいって要請が教育委員会からあって・・・でなんと、山岡俊と小川実香の二人がフランス語をかなり話せると聞いたから二人に出てもらおうと、んで・・・」
小川・・・その言葉を聞くとなぜか静谷先生の言葉の後半を聞き取れなくなっていた。
小川・・・その言葉を聞くと胸が熱い。
そして二つ返事でその話を受理した。小川がいるなら当然受理だ。
そしてようやく気がついた。あの感覚は恋。オレは直喜がいっつもオレに言う恋を小川にしちまったんだ。
それに気がついた七月。俊の実香への恋は今始まったばかり。