だめなひと。-5
クルミの奥にある、彼の毛の生えた汚い器官に、私は体液で濡れた小指をあてがった。射精を我慢しているからだろうか、そこはぐにぐにと蠢いて開いたり、閉じたり。
私が爪を伸ばさないのはこうするため。これが、好きだから。こうやった時のオトコの反応を見たいから。
「ほぁぁっ!!」思った以上に反応してくれた。嬉しい。素敵。
小指をねじ込む。細いとはいっても、多分彼には初めての経験だったらしい。そこがぎゅう、っと閉じて私の小指を弾き返した。膣の中ではオトコが暴れている。
汚いオトコ。汚い場所。でも私はもっと汚い。オトコの洗ってもいない排泄器官に指をつっこむオンナ。最低。最悪。変態。でもそれがイイ。
「ひぁぉ、きひぃ!!」白目を剥いてお尻を上げ、器官に指をねじ込まれる痛みから逃げようとする彼。でも逃がさない。
私の小指がそこに入った。中で曲げて、押し出されないようにする。ちょっと回して、また奥に。彼の背中が反った。でも許さない。彼のペニスが私の膣の中で見せる動きを指で真似する。
「くはぁっ!!」縛った手の指が助けを求めて何かを掴もうとしている。情けない悲鳴。彼の涙。泡のような涎を垂らし、わななく唇。うつろな眼。
その表情を見た瞬間、私は弾けた。
腰が、機械のように動く。膣がペニスをつかんで引きずり回す。涎を垂らし、オトコの肛門をいじくり、クリトリスを引き抜くようにつまみ、胸を振りたてて。頭の中はペニスでいっぱい。いっぱい。私の脳が子宮になって。
「くあぁはぁ……っ!! いい、いいのっ!!」
目の裏で火花が散る。膣が蠢いている。子宮が叫ぶ。キモチイイ、スゴクイイと。乳首が痛い。真っ赤になって尖る。クリトリスがじんじんして痺れる。足がつって痙攣する。私の液でどろどろになった指が震えている。
身体を支えきれずにベッドに倒れる。ベッドが派手に軋んだ。私の膣がそれを開放すると、濁った液で濡れた彼のペニスが立ちあがり、一拍おいて、尿道から白い液体がどくどくと流れ出した。
「ふぅぅん……ふぅん」
大きく息をつきながら彼から力が抜けた。のどぼとけが上下に動く。
ペニスの先からはまだ精液が止まらない。ペニスを伝い、陰毛の周りにゼリーの池ができた。
ホテルの部屋に、オンナとオトコの息遣いだけが響く。汗の匂い。シーツの糊の匂い。私の身体から染み出した淫らな汁の匂い。テーブルに飾られた花のかすかな匂い。乾いた唾液のつんとする匂い。
しばらくして、びくん、と私の膣が動いた。
私は静かに起き上がった。もうコイツは、いらない。
もうそこにあるのは、私の好きなペニスではなかった。だらりと垂れ、鼻をつく匂いを漂わせる、冷たく柔らかい、どうってことのないモノ。
そこに横たわっているのはオトコではなかった。醜い身体の、茂田という小さな広告代理店の経営者。仕事を餌に、私で性欲を満たそうとしたイキモノ。それに食いついた私もダメなイキモノ。
満足げに茂田が表情を緩めた。
「……舐めてよ」
髪をかき上げると、私はその冷えたペニスに顔を近付けた。唇を湿らせ、吸いついた。おうっ、と茂田は細目で私に微笑む。放出した精液をオンナに舐めさせて喜ぶ男。子宮に射精するのが怖いのだ、きっと。そこから生まれる責任やら関係やらも楽しめないくせに。
私は猫がミルクを飲むような音を立てて、飛び散った精液を舐めた。口に貯めた。吐き気がする。陰毛に付いていた精液は唇でこそぎとった。腹の上で揺れる精液は体温のせいか、まだ暖かかった。唾液で薄めるようにして舌で舐め取った。
私は唇に残った茂田の精液を人差し指で広げると、茂田に覆い被さった。そっと口を動かしてやる。茂田の眼が輝いた。私が精液を飲み干すのを見たいのだろう。それで征服したつもりになれるのだろう。
私は爪を立て、茂田の乳首を思い切りつねった。ギャッ、と大きな叫び。
茂田は大きく口を開く。
私は茂田の頬を押さえ、開いた唇にキスをした。私が唇を開くと茂田の精液と私の唾液が一気に流れ出て、茂田の口を満たす。最後に唾も吐いた。にっこり笑ってやった。
「な……、何……?」
ネクタイで手首を縛られ、あお向けのまま、茂田は自分の精液を吐き出し、むせた。歪んだ顔は精液と唾液と涙にまみれていた。
「……飲まないんですか?」
仕事を忘れて楽しんだ私は、ベッドから降りた。
茂田は私に向かって何か罵声を浴びせた。私がシャワーを浴びた後も、何か大声で言っていた。振り返るとネクタイで手首が摺れ、うっすらと血が滲んでいた。
服を着て部屋を出た。ホテルに空車のタクシーがいるだろうかと考えた。けれどすぐ、これから半年は節約しなければいけないことを思い出した。