best friend-2
「里奈ー」
バス停に向かう途中で、突然名前を呼ばれた私は、ビクッと体を強張らせた。
恐る恐る振り返ると、気の強そうな猫みたいな瞳をした少女が私の元に走って来る所だった。
さらに私の体が恐怖で動けなくなる。
メデューサを見て石にされる人になったような気分だった。
少女は私の元にたどり着いたときはすでに肩で息をしていて、胸元に手をあてていた。
「め、恵(メグミ)……。」
「高校、別々になっちゃったね。
あたし、里奈と同じ高校に行けると思ってたのに、あんたがまさかあのA高に受かるとはねえ。
ザ・ン・ネ・ン」
恵はニヤニヤしながら強張る私の肩を突き飛ばす。
重心が後ろに傾いて足元がふらついたが、なんとか足の裏に力を込めて踏ん張った。
恵はチェッと笑いながら小さく舌打ちした。
私が転ばなかったのが気に入らないのだ。
私のイジメの主犯格、恵。
外面だけはよく、表面上はイジメを受ける私を心配してくるが、その陰ではよくもまあ飽きないほど、あの手この手で私に嫌がらせをしてくるのだ。
私の上履きを隠すなんてことは日常茶飯事、教科書の大事な公式が載っているページを破いたり、体操着のお尻の部分に直径3センチほどの穴をあけたりしたこともあった。
あからさまにわかるイタズラじゃないから授業が始まってから気付くことが多い。
ページを開くよう先生に言われ、そのページが見あたらなくて焦ったり、体操着の穴に気付かないで授業に出たら、男子がニヤニヤしながら私に
「お前、誘ってんのそのケツ」
なんて言うのでお尻に手をやれば、穴の存在に気付いて下着がモロに見えて慌てて更衣室に逃げたり。
そして慌てふためく私を見て、友達と馬鹿笑いしてるのだ。