best friend-13
しばしの沈黙が流れた。
と言うより、恵子の言ったことが理解出来なかった。
恵子とテルヒコくんが?
どうして?
私の方がテルヒコくんと仲良かったのに?
疑問符だらけの私をよそに、恵子は付き合う経緯を事細かに教えてくれた。
でも、そんなことなど私にはどうでもよかった。
――テルヒコくんは、私の好きなテルヒコくんは、私じゃなくて恵子を好きだったからだ。
テルヒコくんは、入学式の日、倒れた私を恵子と共に保健室に連れて来てくれた。
そのことで後ほど彼にお礼を言うと、テルヒコくんは恥ずかしそうに笑って、
「気にしなくていいよ」
と、頬を掻いただけだった。
私はそのはにかんだ爽やかな笑顔に、一瞬で恋に落ちた。
寝ても覚めてもテルヒコくんのことで頭が一杯だった。
左隣に座る親友と、右隣に座る好きな人に囲まれ、私達三人はいつも同じ時間を笑い合って過ごした。
それは今まで生きてきた中でいちばん幸せな時間であった。
三人でいても、テルヒコくんは私にばかり話しかけてくるし、私はそれを彼の好意と受け取り、同じ気持ちを抱いているものだと思っていた。
でも実際は、照れ屋なテルヒコくんは、恵子に話しかけるのに緊張しすぎて、私というクッションを置いていたに過ぎなかったのだ。
そんな事実を知った私は、一気に絶望の淵に追いやられた気になり、もはや平気な顔などしている余裕が無かった。
「……里奈?」
キョトンとした顔の恵子をそのままに、私は走り出していた。