投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

ヒプノ・フラッシュ
【SF その他小説】

ヒプノ・フラッシュの最初へ ヒプノ・フラッシュ 2 ヒプノ・フラッシュ 4 ヒプノ・フラッシュの最後へ

時短催眠-1



私は自主的に退職することを勧められた。

全くの言いがかりにすぎないのだが、私はいい加減うんざりしてこちらから辞めてやることにした。
 
そして仕方なしに『向山催眠療法所』という看板を掲げて個人開業することになった。

普通の民家に看板をつけただけの簡単な療法所である。

ところが催眠というと怪しげな響きがあるらしく、誰も来ない。

散々待ったあげく1人の母親が男の子を連れて来たのが最初のお客だった。

「あのう、おいくらくらいかかるんですか?」

「30分で3000円ですが、2回目からは割引になります」

「そうですか、この子の頭を良くしてもらいたいのですが」

言っておくが世間一般の催眠に対する認識とはこんなものなのだ。

催眠で頭が良くなるのなら、世界中の子が学者になれる。

ある気功の老師が言ったことがある。

気功の達人でも癌は治せないし、遺伝病にも無力だ。

何にでも万能だという考えは、無知の為せる業だと。

催眠だって同じなのだ。まず、病気とか先天的能力に対しては無力に近い。

だが、それで追い返していたら商売がなりたたない。

なんとかしなければならないのである。

男の子は小学校低学年らしい。やんちゃそうで遊びたい盛りなのだろう。

「僕は何年生? ほう、2年生かい? 勉強は好きかい? あまり好きじゃない?

家で勉強するのはどのくらい? ほう……15分くらいか。」

母親はそこで横から口を出した。

「遊びに行きたくて、その15分だって勉強が頭に入っていないのですよ」

私は2人に向けてフラッシュをたいた。

そして母親は私の治療中は口を出さないように控え室で待っているように言った。

それから私は時短催眠をかけた。

メトロノームの音を聞かせ、その音の間隔がだんだん長く感じるように暗示した。

そして、1秒が10秒の長さに感じるようにまでにした。

「君は毎日15分だけ勉強する。

そのとき君の集中力はすごくなり、今と同じように短い間に沢山のことが考えられるようになる。

実際は15分だけど、その10倍の2時間半勉強したと同じくらいになる。

君はその日学校で習ったことをよく思い出せるようになるし、そのおさらいをするのが楽しくて楽しくて仕方がない。

必ずそうなるよ。目が醒めても、必ず毎日勉強を15分する。

それをしなければ遊びに行くことはできない。では目が醒めるよ!」

母親を呼ぶと私は、もし効果が見えたらお知り合いの方たちに宣伝してくださいと頼んだ。

一度催眠に入った母親には暗示効果があるので、きっと宣伝してくれるに違いない。

果たして3・4日すると、噂を聞いて子供を連れた母親達が殺到した。

私はその子供達に時短催眠をかけて、家庭学習をしっかりするように暗示をかけた。

頭をよくする催眠なんて存在しないのだが、短時間で集中的に学習する時短催眠でどの子もなんとか成績もあがって行ったようだった。

 


ヒプノ・フラッシュの最初へ ヒプノ・フラッシュ 2 ヒプノ・フラッシュ 4 ヒプノ・フラッシュの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前