生徒会へようこそ【MISSION'5'生徒会を再建せよ!】-5
放課後。
委員会活動をするために、僕と宝さんは一緒に第4多目的室に来た。
が、まだオッさんは来てないみたいで扉は開かない。
「小鞠さんは今日は来ないそうだ」
「キミさんも。オッさんも…なのかな」
「どうかな」と、宝さんは苦笑した。
仕方なく早羽さんが置いていった鍵で僕は錠を開け二人で中に入った。
いつもなら誰よりも早くオッさんはここに来て、僕らを待っててくれた。
一人で筋トレやらカラオケやら読書(漫画又は絵本)やらをしながら、誰かが来るたびに「よぉ!」と声をかけてくれた。
それが日常で習慣だったので、薄暗いしんと静まり返った室内に足を踏み入れるのは違和感があった。
別の部屋みたい。
「まるで別室だな」
誰に言うでもなく宝さんが呟いた。
「僕も思った。こんなに静かだったんだね」
「ここの校舎を使っているのは寿絵瑠たちだけだからな。その上本校とも離れているし」
「そうだね」
部屋の照明を点けてそれぞれいつもの場所に座る。
「てことはさ、先輩たちって物凄〜く煩いんだね。僕は普段から静かだし」
「先輩たちというよりは、オッさんが一人ではしゃいでいるだけだろう」
「ははっ、確かに。この前宝さんが遅れて来たときなんだけどね、オッさん、一人で校歌歌ってたんだよ。ロック調で歌ったら格好いいんじゃねぇかって言って」
「ああ、知ってる。クラスの装飾委員に頼まれて大廊下の模様替えを手伝っていたのだがな、聞こえていたよ」
「えっ!あそこまで声届いてたの?」
「ちゃんと小鞠さんの合いの手までバッチリだったぞ」
「『我が校きっての大スター♪』とか『頑張れ世界の鯨岡♪』ってやつ?」
「ははっ、そうそう!それだ。よく思い付くものだ」
気が付けば、僕たちは先輩たちのこと、生徒委員会のこと、今までの依頼のこと、そんな他愛もないことをお喋りしていた。
あれ知ってる?
こんなことがあったんだよ。
あの人分かる?この間ここに来てね。
だけど、どれもこれもこの生徒会に関することばっかりで、どの話にも先輩たちはところ構わず登場する。
僕たちは委員会終了時間まで話に花を咲かせていた。
「やはりこのままではいけないな」
終了時刻のチャイムが鳴り終わると宝さんがそう言いながら立ち上がった。
「うん。僕もそう思うよ」
数時間前にあんな修羅場があったのに、宝さんは妙に清々しい顔をしていた。
きっと僕だって、同じように吹っ切れた顔をしているはず。
「僕らで生徒委員会をもう一度立て直そう」
オッさんには「放っとけ」って言われるのかもしれない。僕らがしようとしているのは余計なお世話かもしれない。でも引き金を引いたのは僕らだ。僕らでこの件にカタを付けなきゃいけない。
それに、僕らだって生徒委員会なんだ。何があったか知らないけれど、先輩たちの都合でこの大好きな空間をぶっ壊されるのはごめんだ。
僕らはペーペーだけどれっきとした生徒委員会。ここを守る権利はあるんだ。