生徒会へようこそ【MISSION'5'生徒会を再建せよ!】-3
「と、いうことで早羽さん。あなたが幽霊であり、副委員長でもあるんじゃないかと思ったんですよ」
決まった!
早羽さんは何も言わず微笑んだまま。
何も言わなくたって僕の考えが当たっていたことは、早羽さん自身がここにいることで証明されている。
僕は探偵という職業に永久就職しようかとさえ思っていた。
が、困った。
ここからどうすればいいんだ。誰も何も言わない。バッチリ決めた自分がだんだん恥ずかしくなってきた。
頬がピリピリするような張りつめた空気。
それを宝さんが感嘆の声を上げてぶっ壊しているけど、これは数に数えられない。
そっか。名探偵はアフターケアも欠かせないのか。
…だから小説に出てくる名探偵ってスマートでカッコいいんだな。
なら、僕には無理だ。
僕は名探偵の道を早々に諦めることにした。
「しかし、待てよ?」
キャーキャー騒いでいた宝さんが、ピタリと止まって腕組みをした。
「なぜ早羽さんは学校に来ていないのだ?」
この宝さんの一言に僕はハッとした。
そう、これ!逆に僕が聞きたかったこと。さすが宝さん!
最近は変な子のイメージが付いてたけど、学年一位の秀才は伊達じゃない。
「あ、そうです。僕もこれだけはわかりませんでした」
「教えてないんだ。乙」
早羽さんがオッさんの方へ首を動かした。しかしオッさんはその問いに答えなかった。
弾かれたように飛びだして僕の前に仁王立ちになり、早羽さんを見据えた。
「てめぇ今頃何しに来たんだよ」
静かな声だったけど冷たくて刺さりそうな鋭さがあった。
久し振りに学校へ来た早羽さんにそんな言い方しなくても…。
なんでオッさんはこんなに刺々しいんだろう。
オッさんの態度に早羽さんの浮かべてた笑みが消えた。
ブレザーのポケットに手を突っ込んで握り拳を取りだし、それを目の前の机の上に叩きつけた。
拳が退くとキラリと光るものが代わりに置かれていた。
…鍵だ。
オッさんが持ってる第4多目的室と同じ鍵。
「これ返しに来たの」
早羽さんの声には少し怒りが混じっていた。
あんなに穏やかで優しそうだった早羽さんもこんな話し方をするのかと驚いた。
早羽さんは、俯いたまま僕と宝さんの間をすり抜けて、誰にも目もくれずに扉の方まで歩いていった。
そして振り返ることもなく、小さい声だけが聞こえてきた。
「…私、学校辞めるから」
ぴしゃんと扉が閉められ、早羽さんの声が余韻を残していた。
学校辞めるって、退学ってこと…だよね。
あまり馴染みのない言葉だったので、実感が湧かないが、停学でヒーヒー言ってた僕が情けなかったことは確かだ。
「だから、首突っ込むなっつったんだよ、俺は」
急にガッと体に衝撃が走った。突然のことに心臓がびくんと跳ね上がる。
振り返ったオッさんに僕は肩を捕まれていた。
…オッさん、すごく怒ってる?
「おい、オツ!」
「オッさん何を!」
食ってかかろうとした宝さんを小鞠さんが「大丈夫」と言って肩を抱いた。