生徒会へようこそ【MISSION'5'生徒会を再建せよ!】-24
僕は一呼吸置いて扉に手を掛けた。
力を入れて引き戸を開けようとした時
「優!」
名前を呼ばれて声の方を見ると、宝さんが階段を登りきって走ってくるのが見えた。
「一緒に行こう」
僕は「うん」と頷いて、宝さんが来るのを待った。
改めて、扉を開ける。
その先には見知った光景が広がっていた。
「ういーす」
机の上で胡座をかいて欠伸をするオッさん。
「あー!!寿絵瑠ちゃん来た来たー!ネイルさせてネイル!」
机にネイルアートのセットを広げている小鞠さん。
「よう香住。これ見てみろ、知ってたか?」
キミさんは僕の好きなアーティストのライブ情報が掲載された画面を、ノートパソコンの向きを変えて見せてくれた。おそらくこれは、公開前の機密情報。
ああ、これこれ。これだよこれ。
このユルい何の委員会だか分からないこの空気。
そんなに時間は経ってないのに、長いこと感じてなかった気がする。
「え、やだ!優ちゃん!?」
「……………ウッ。…………ウゥッ」
泣かせてくれよ畜生!!どんだけ心配したと思ってたんだよ、こん畜生共!!
「わー!!香住バカか!何泣いて…宝まで!?」
「うわあぁぁ〜ん!!!本当に皆いるぅぅぅ〜!!!」
大口を開け、ボロボロ涙を溢す宝さんと「良かったね、僕ら頑張ったよね」と称えあった。
アッハッハと、普段あまり笑わないキミさんの声が聞こえたかと思うと、カラカラと扉の開く音がした。
振り返ると、制服を着た早羽さんがすぐ後ろに立っていて
「なんの騒ぎ?お祭りでもやってるの?」
と、にっこりと微笑んでいた。
「ざわわぁーーんっ!!」
僕と宝さんの声が重なった。泣きすぎて声が枯れて、早羽さんと呼んだ筈がサトウキビ畑のようになっているような気がしたが気にしていられない。
「かすみちゃん、寿絵瑠ちゃん。…昨日は、ありがとうね。ほら、私、戻ってくることが出来たよ。学校も辞めなくて済んだ。
二人のおかげ。本当にありがとうね」
「あ、あお!こっ…かえっ…」
あの、これ返します、と言いたいが全く言葉にならない。
僕は兎に角無我夢中で早羽さんに鍵を差し出す。
「さっ…こえは…さっさわ!…さんの」
これは早羽さんの物です、と言いたいのかぐしゃくしゃの顔で宝さんがしゃしゃり出た。
「鍵…かすみちゃんが持っててくれたんだ。もう手放さない」
早羽さんは鍵を受けとるとそっとしまった。