生徒会へようこそ【MISSION'5'生徒会を再建せよ!】-19
●乙&早羽●
乙はいつも通り机の上で胡座をかき、頬杖を着いた。この部屋にいるとここで、この体制でいるのが一番落ち着いた。
早羽は部屋の中を歩きながらペタペタと壁や椅子などを触っている。
「…お前、本当に学校辞めるのか」
「うん、辞めるよ」
相変わらず部屋の中の物を触りながら平然と即答する早羽。
「別に構わないでしょ?私が辞めたって」
「…」
乙は返答に詰まった。
そんな乙の様子に早羽が言葉を続ける。
「乙も…思ってるんでしょ。ビッチ…とか」
足を止めて自嘲気味に笑う。
『ビッチ』『売女』『援交女』『サイテー』
謹慎を受けた春休みの間、知らないアドレスから届く言葉の数々で自分の状況を察した。
元々友達も少なかった早羽。
これが今の私への周囲の評価なんだと感じた。
「乙も周りの子達みたいにやったと思ってるんでしょ」
だけど、それでもいいと思った。自分で弁解したところでどうせ言い訳にしか聞こえない。
こんなことをしてくる人には到底通用しない。
少なくとも、自分の仲間たちだけ真実を知ってさえいればいいと思った。
「渡邊先生たちに本当のこと聞いたんでしょ?でも信じてないってことだよね。だから今まで何も言わなかったんだよね」
今まで留めて置いた気持ちや感情が一つ、また一つ、早羽の口から溢れていった。
本当はずっと言いたかった。不満や誤解を分かって欲しかった。
でも言えなかったのは、唯一の友達ですら、他人と同じだったのが悲しかったからなのかもしれない。
●優&寿絵瑠●
はてなマークを浮かせた宝さんが首を傾げた。
「あのさ、早羽さんに援交したかどうか聞いたとき『ノーコメント』って言ったの覚えてる?」
「あ?ああ…。そして、『そんなことはどうでもいい』と言ってたな。それが、関係あるのか?」
「うん。考えてみて?本当にどうでも良かったら、周りの声なんか気にせずに学校来ればいいと思わない?だって援交してるって思われてもいいってことだからね」
「まぁ、確かに。ん?待てよ。でも早羽さんは、オッさんにサイテーな女って思われてるから学校には行けないって言ってなかったか?おかしくないか?」
「うん、矛盾してるよね。
だから…きっと早羽さん、どうでもよくなんか無かったんだよ。本当は」
「誤解されたままでは嫌だったということか…。真実を分かってほしかった…と」
僕の言葉を聞いて宝さんは目を伏せた。
「うん。僕らに言った『どうでもいい』は、早羽さんの強がりだったんだよ」
「そうだな。その上、オッさん達にまで誤解されてると勘違いしていたら、学校に早羽さんの居場所は無くなってしまう」
「悩んで悩んで出した答えが退学…だったんだ。たぶん、だけどね」
「早羽さん、とても悲しかっただろうな。そんな噂が流れて…。どんなに傷付いたか…。あ、そうか。もしかしてオッさんは…」
「…たぶんね。宝さんが思っている通りだと思うよ」