生徒会へようこそ【MISSION'5'生徒会を再建せよ!】-17
●乙&早羽●
「なんだよ、お前もいたのかよ」
ここからの脱出を諦めると色々見えてきた。
ここが第4多目的室であること、自分が誘拐されたこと、床に散らばる諸々、それに早羽。
「いるよ、今気付いたんだ」
噛み付く乙をひらりとかわす早羽。乙の爆笑必須の姿を見ているので、その噛み付きさえ面白く感じてしまう。
「…くっそー…何なんだよ。ふざけんじゃねぇよ」
がしがしと頭を乱暴に掻きながら、おそらく自分が身に付けていたであろう物を手に取る。
「………出オチだろ!」
それを床に叩き付ける。
「そんなことないよ。すっごい面白かった」
ニコニコと笑っている早羽。対照的に乙は、恥ずかしさと苛立ちで感情をうまくコントロールできない。
「っ…。何でお前はそんな普通なんだよ!」
「だって私、誘拐されるって知ってたもん。『お嬢様、何も聞かず誘拐されていただけませんか?』って言われて『はい分かりました』って」
「…誘拐に二つ返事で肯定するやつ普通いねぇだろ」
「イケメンに『お嬢様』なんて言われたことなかったんだもん。無事の帰宅は保証してくれるって言ってたし、まぁ誘拐されてもいいかなって思ったの」
乙は自分の状況との差に落胆した。
「…俺の扱い雑過ぎんだろ」
夜道を歩いていたら、急に目の前が暗くなったのだ。抵抗するも、あえなくこの有り様。しばらく思考を巡らせて、こんなことするのは宝しかいないと思ったけれど、その結論にたどり着くまでどれほど不安だったか。
「…お前、肝座ってんな」
「それはそれは。どうも」
早羽は深々と頭を下げた。
嫌悪感むき出しのまま別れた二人が、こう会話しているのは夜のせいか、非日常のせいか、それとも、この部屋で二人で過ごすのが久し振りで心地好いからなのか。