アンバランスな愛-5
ーーーーーーーーーーー
「……でな、クラスタじゃまともな治療も出来ないってんで、転移の魔法陣作って一気にファンまで帰ってきたってわけ」
サクサク話すキャラは小さな瓶をゼインに渡す。
小さな瓶の中には、小さな小さな種が納まっていた。
ゼインは瓶を弄りながら頭の中を整理する。
キャラは何気なく話しているが、ゼインには話の規模が大き過ぎていまいち理解出来ない。
「あ〜…っと……ここはファンなのか?」
「うん。詳しく言うとファンの城の中かな?」
「へ?何で城に?」
「オレの実家だから」
「はい?」
「オレの本名は、キアルリア=C=ファン。これでもファンのお姫様なんだな」
キャラの言葉にゼインはまじまじとキャラを見つめる。
ばっちり化粧をしていてあの頃とは別人のような顔に、ピンク色の簡素なドレス。
「あ!!ああ!ケイんトコで見た写真!!」
あれに写ってた強いお姫様……それは過去に一緒に旅をした……ゼインが抱いた女だった。
その事に気づいたゼインはサァッと青くなる。
「……ああ、セックスした事は気にすんなよ。あれはオレが望んだ事だし、感謝してんだからさ」
精神的に不安定だった自分には必要だった、とキャラは手をヒラヒラさせて言う。
「そ…そのお姫様が、何で……?」
今現在、自分に関わっているんだ、とゼインは恐る恐る聞いた。
「カイザスでカリーとオレの話したろ?それをケイさんが聞いててな……ケイさんはポロの記憶読んでたから直ぐ分かったってよ」
それで、ファンに戻って来てからどうしてもポロを守りに行きたくて、キャラに協力を求めてきた。
「ま、オレやエンさんは良いとしてゼビアの魔導師も必然的に巻き込んでっから、色々と覚悟しといて」
「なんでそのゼビアの魔導師まで首突っ込んできたんだよ?」
キャラとエンは善意だろうが、ゼビアの魔導師の事はひとつも知らないし、頼んでもいない。
「オレの旦那だから」
「……ん?」
「1年前、結婚したんだよな」
「んん?」
そういえば、ケイがそんな話をしていたような……。
「オレの旦那って過保護なの。で、すっげぇ嫉妬深いから……色々と覚悟しといて」
もう一度、強調して言ったキャラに、ゼインは頭を抱えた。